オーロラの根源を尋ねると – 視点
2024・6/5号を見る
【AI音声対象記事】
スタンダードプランで視聴できます。
筆者は一度だけオーロラを見たことがある。成田空港からアメリカ・シカゴ経由でアトランタへ向かう深夜のアラスカ上空でのこと。真っ暗な機内で読書灯を点けて文庫本を読んでいると、CAが小声で「いま、オーロラが出ていますよ」と教えてくれた。
窓のシェードを開けて外を覗くと、確かに見事なオーロラが夜空を飾っている。飛行機とほぼ同じ高さで、緑色の巨大なベールがゆっくり棚引いていた。なんという美しさであろうか。あまりに神秘的な光景が忘れられない。
さて、この5月に世界各地でオーロラが観測された。低緯度の日本でも、北海道、東北、北陸などで出現して話題となった。鎌倉時代の藤原定家の日記『明月記』に、建仁4(1204)年の京都で何度も赤気(オーロラ)が見えたとの記述がある。
また、江戸時代の明和7(1770)年編纂の古典籍には、山から吹き出すような赤い光が描かれている。若狭国(現在の福井県南部)で火事が起こったのではないかと記され、京都からオーロラを描いたらしい。日本語でオーロラは「極光」といい、歴史上しばしば観測されている。
今回、世界各地でオーロラが頻発した原因は、大規模な「太陽フレア」(太陽面爆発)が続いたことにある。5月のそれは最大級で、大爆発が3日間で7回発生したのは観測史上初だという。爆発の際、凄まじい電気エネルギーを持つ太陽風(プラズマ)が放出され、地球に降り注ぐ。
一方、地球の中心部分には鉄やニッケルなどの金属で出来た核がある。それは流動して電気を起こす。つまり、地球の中心で常に発電している状態で、その電気が磁力を生みだし、地球の磁場を形成する。
東京工業大学の研究グループは「地球の誕生直後から存在した磁場が太陽風を遮断して、大気の散逸や海の水分の蒸発を防いでいる。また地球表層への強い紫外線照射も防いで、生命の陸上への進出を可能にしたようだ」と説明している。
つまり、磁場が地上を太陽風から守るバリアとなっているのだ。そして、プラズマが磁場や大気によって影響を受けたとき、発光してオーロラが生まれるという。
オーロラの根源を尋ねると、親神様のご守護の偉大さとともに神秘的な姿の意味が見えてくるかもしれない。
(町彦)