世界的猛暑の夏に夢想する – 視点
2024・8/21号を見る
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世界的に記録づくめの夏だった。7月25日、国連のグテーレス事務総長は、世界の平均気温が21日と22日に連続で観測史上最高を記録したとして、「足下に火がついている」と警鐘を鳴らした。
日本でも酷暑が続いた。環境省運用の「熱中症警戒アラート」は昨年、初の千回超えとなる1,232回の発表を記録し、今年はすでに1,024回を数える(8月11日現在)。
一方、消防庁によると、今年の熱中症による全国の緊急搬送は、7月21日までに3万4,547人、21日以降は週ごとに1万人を大きく上回り、8月11日現在で推計7万人。熱中症の死亡者数も右肩上がりで、ここ数年は年間1千人超で推移している。
地球温暖化は「人間活動が引き起こしてきたことに疑いはない」と、最新の気候変動に関する政府間パネル第6次評価報告書に明記されている通り、国家間の利害を超えて取り組む喫緊の課題である。しかし、足並みは揃わない。先のグテーレス事務総長は6月、世界の月間平均気温が1年にわたり最高を更新し続けていることにふれ、「この1年、地球は私たちに何かを伝えようとしているが、私たちはそれに耳を傾けていないようだ」と語った。
ところで、日本人で最もノーベル経済学賞に近いといわれた“良心の研究者”がいた。10年前に亡くなった宇沢弘文・東京大学名誉教授だ。高度経済成長期の公害や自然破壊を深く憂慮し、「人間のための経済学」を追究して、人類の安定的な幸福の土台となる「社会的共通資本」の概念を提唱した。
宇沢氏は著書で批判する。人間が生きていくうえで最も大切な自然環境という社会的共通資本を、利潤追求の市場経済のもと“無料の自由財”として勝手に利用してきたことが、人類全体に途方もない脅威をもたらした、と。
お道の信仰の目的は「陽気ぐらし」にある。もとよりそれは「めん/\勝手の陽気」(おさしづ明治30年12月11日)ではない。いくら自分が幸せでも、戦争になる、大地震が起こる、地球環境に異常を来すとなれば、個人の幸せは吹き飛んでしまう。個人の幸せは他者と密接不可分な関係にあり、共に幸せを味わえる持続可能で安定した社会づくりを進めることも、「ほんとの陽気」(同)につながるだろう。
恩師の学問的良心を受け継ぐ一人、松下和夫・京都大学名誉教授は言う。人と人が助け合う社会は、より持続可能で安定的である。政府や自治体のみならず、企業やNPOなどが協働して「新しい公共」を創出することが、いま求められている、と。そのひと役を、全国各地の教友有志が担っている そんな近未来を夢想する。
(松本)