SNSでの誹謗中傷に思う – 視点
2024・12/4号を見る
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今夏、世界を熱狂の渦に巻き込んだパリ2024オリンピック。各競技のアスリートの活躍は人々に感動を与えたが、半面、SNSで選手や審判への誹謗中傷が相次いだことも、殊のほか印象に残った。心ない非難を受けたアスリートや審判は、どれほど心を痛めたことだろう。
SNSで自分の意見を拡散するとともに、周囲の意見に敏感に反応する世代が格段に増えたことが要因の一つだろう。また、そうした行為の多くが、確たる根拠がなく、偏見や誤情報に基づいているにもかかわらず、取り締まる法整備が追いついていない問題が露呈したともいえよう。
こうしたSNSによる“言葉の暴力”は、スポーツ全般に見られる。
日本のプロ野球でも深刻な問題になっている。日本野球機構(NPB)は、ファンに対し、誹謗中傷等を拡散しないこと、SNSの投稿に当たってマナーを守ることを訴えているが、大きな改善は見られなかった。そのため、日本プロ野球選手会は昨年9月、顧問弁護士による対策チームを立ち上げ、今年になって「プロ野球選手に対する誹謗中傷行為等への対応報告」というレポートを2度にわたって発表した。
プロ野球では昔から、選手へのヤジは一種の文化になっていた感もある。ヤジは多くの場合、誰が言ったのか分かるが、SNSによる“顔の見えない誹謗中傷”は陰湿だ。
もちろん、SNSはインターネットの特性を生かし、不特定多数の人が交流したり、情報を取得したりするうえで、現代社会に欠かせない“ツール(道具)”になっている。しかし、スポーツ界のみならず、芸能界や政治の世界など、さまざまな場面でSNSの負の部分がクローズアップされている。
SNSを利用するとき、お道の者として何より心がけたいことは、一れつ兄弟姉妹の意識を忘れないことだ。「睦まじいが第一」(おさしづ明治24年7月7日)と教えられる。さらに「仇言にも捨言葉神は大嫌い」(同明治24年1月28日)というご神言を肝に銘じたい。日常生活のどんな場面でも、相手を生かす言葉を紡ぎたいと、あらためて思う。
(永尾)