締めくくりの年を“無我夢中”で – 視点
2025・1/15号を見る
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先ごろあるテレビ番組で、野球の練習で使われるピッチングマシン製造会社が紹介されていた。同社が作るピッチングマシンは、回転の掛かった伸びのある球をコントロール良く投げるのみならず、アーム式のマシンでは不可能とされた変化球のスライダーを投げ分けるなど高性能で知られる。その製造は、部品の組み立てはもとより、ボルト1本を締める工程まで手作業で行われる。日本のプロ野球のほか、メジャーリーグの球団にも導入されており、かの大谷翔平選手も帰国の折に同社に立ち寄るという。
自らも野球選手だった社長は、県大会で好成績を収める母校の野球部員が100人以上になり、バッティング練習ができない部員が多い状況を知り、若い選手のために何かできないかと思い立つ。従来はほかの鉄製機械の部品を製造していたが、その技術を生かし、ピッチングマシンを考案・製造するようになった。現在、社長のもとで二人の息子が修業中だが、社長は「技術は飽くなき探究心である」と言いきり、息子たちに何も教えることはない。息子たちは「見よう見まね」で、ひたすら技を磨く。確かな技術が培われる中小企業の神髄を垣間見て、“観後感”が清々しかった。
また、学びが詰まった番組でもあった。一つは、マシン製造の動機に、社長の「母校の高校球児のために」という熱い思いがあったこと。また一つは、すべての工程を自らこだわりをもって手作業で取り組む徹底ぶりと、常に次の目標を掲げる向上心が強いこと。そして、情熱をもって仕事に取り組む父親の姿に感化された二人の息子が、家業を継ぐべく、親をまねて技を盗もうとしていること。家業を大切にする家族の絆が、そこにあった。
殊に年の初めに当たっては、お道の信仰生活を送るうえにも問いから始めることは大切だろう。誰のために努力するのか。何を具体的な目標とし、心を磨くのか。そして、自身の信仰姿勢をもって周囲の人を巻き込んでいけるのか。
これらを自らに問いかけ、熱意をもって取り組むことが最も大事であると思う。それは結果として、お道の信仰に夢中になるということだろう。教祖140年祭へ向けての三年千日の締めくくりの年を、とにかく“無我夢中”で取り組みたい。
(永尾)