訪日外国人旅行者の増加に思う – 視点
2025・3/19号を見る
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筆者の学生時代は、昭和のバブル景気に日本国中が沸いていた。企業は続々と世界へ進出、投資し、株高と円高の好景気をもたらしていた。恩師は「親神様がお与えくだされた絶好の機会。若き者は、いまこそ世界布教を志せ」と声高に訴えた。
現在は円安の影響もあって、国内への外国人旅行者が増え続けている。日本政府観光局(JNTO)の発表によると、令和6年の訪日外国人旅行者数はコロナ禍以前のピーク時を約500万人上回る、3,687万9,900人と過去最多となった。
一般的に観光客といえば、「一見客」ばかりというイメージが強い。だが訪日外国人旅行者の場合、大半はリピーターが占めている。外国人旅行者が日本に興味を持つきっかけとしては、日本の伝統文化、歴史や歴史的建造物、自然、食文化、テクノロジー、また、アニメ、マンガ、ゲームなどが挙げられる。
なかでも日本人の国民性についての評価が興味深い。一部のSNSは、日本人の礼儀正しさや優しさ、おもてなしの精神などを称賛する書き込みや動画で溢れている。
最近では日本人の国民性のルーツに興味を持ち、歴史的な建造物を観光したり、伝統文化にふれたりすることに留まらず、そこに込められる精神性や宗教、信仰の思想体系を知ろうとする人が増えている。今後、彼らの本質や原因を見極めようとする探究心は、ますます深まっていくのではないか。
教祖は「ここは、人間はじめ出したる元の屋敷である。先になったら、世界中の人が、故郷、親里やと言うて集まって来て……」(『稿本天理教教祖伝逸話篇』182「元の屋敷」)と仰せられた。世界中の人間が一れつ兄弟姉妹ならば、兄弟姉妹相互が相談し合って、真実の親を探し求めて旅し、いずれ故郷である親里に帰り着くことは、ごく自然な摂理といえよう。
筆者が若き日に賜った恩師の言葉を思うとき、いま世界へ向けた布教は元より、何をおいても自らの心の成人が急務である。
人間創造の元のぢばは、たすかりの源であり、たすけを発する元である。世界から帰り来る兄弟姉妹に「天理教とは?」と尋ねられたとき、心の中で「私を見てください」と呟けるように怠ることなく準備しておかなければならない。
(岡本)