ご守護に向き合い恵みを味わう – 視点
2025・7/9号を見る
【AI音声対象記事】
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「令和の米騒動」と呼ばれるお米の価格高騰が続いている。これに対し、政府は備蓄米の放出に踏み切り、テレビでは連日備蓄米の食べ比べが行われ、どれが古米か判別できないほど味わいに遜色がないというコメントが多く聞かれた。日本が経済的に豊かになってから、国民がこれほどまでにお米やご飯の味に向き合う機会は、あまりなかったように思う。
ご飯といえば、天理時報(3月26日号)でようぼくの安田淳一監督が、「侍タイムスリッパー」という作品で「日本アカデミー賞」の「最優秀作品賞」を受賞したと報じられたが、監督は過去に「ごはん」という作品も手掛けている。タイトルに興味を惹かれて視聴してみると、まさに米騒動の裏で語られている米生産農家の現状と苦労が描かれていて、大変感銘を受けた。
物語の終盤、それまで農業を経験したことのない農家の娘・ヒカリが、慣れない農作業に悪戦苦闘しつつも、なんとか収穫を迎える。ヒカリは取れたばかりの新米でごはんを炊き、炊き立てのごはんを口に運んで、米作りに奮闘した日々を思い起こしながらゆっくりと味わい、「おいしい。すごいおいしい。お父さん、ごはんって、ほんまはこんな味がするねんな」と涙ながらに呟く。物事にじっくりと向き合い、嚙み締めることによって、人はより深く味わいを感じることができる、本作には、そんなメッセージが込められているように感じた。また、作中には稲の生育とともに移り変わる美しい田んぼの風景が映し出されていて、自然の恵みの有り難さや尊さを味わうことができた。
教祖は「水を飲めば水の味がする。親神様が結構にお与え下されてある」(『稿本天理教教祖伝』第三章「みちすがら」)と仰せられるが、考えてみれば、この世界は親神様のご守護や恵みで溢れている。昨今の物価高や米価の高騰によって多くの方が大変な思いをされている。一日も早く安心してご飯が食べられる状況になることを願うが、このようなときには努めて丁寧にご守護に向き合い、恵みを味わい喜ぶことで、教祖のひながたを辿らせていただけるのではないだろうか。
(清水)