将来の開花結実に向けて – 視点
2025・7/30号を見る
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「退職代行サービス」が近年、注目を集めている。文字通り、従業員本人に代わって代行業者などが会社に退職の意思を伝えるサービスだ。2017年に国内で初めて同サービスを扱う業者が登場したのを皮切りに、認知度が徐々に高まり、現在では100を超える専門企業が競合するようになった。この背景には、キャリアアップを目指す転職希望者の増加や昨今の働き方の多様化など、さまざまな要因が複合的に作用しているという。
サービスの是非をめぐる議論は尽きない。「上司や同僚に礼を欠く」「引き継ぎが不十分になる」など、利用に対する批判の声は少なくない。しかし一方で、職場でハラスメントを受けている、引き留めが強引で退職を認めてもらえないなど、余儀ない事情から選択を迫られるケースもあるという。そうした意味では、一種の“駆け込み寺”としての役割を果たしているのかもしれない。
20代を中心とする若い世代ほど、サービスの認知度と利用率は高い。退職代行サービス「モームリ」を運営する株式会社アルバトロスが公開したデータによると、昨年度にサービスを利用した新卒社員は1,814人に上り、月別では4月と5月が最多だった。その理由には、待遇が事前の説明と異なる、暴言や必要以上の叱責を受けた、現場に出て自信を無くした、などなど。売り手市場のいま、職場環境の透明性が大きな課題になっている。
その一方で、自分に合った仕事を求めて早期退職を繰り返す若者に対して、逃げ癖がつく、社会性や忍耐力が養われないなどの危うさが指摘されている。事情はそれぞれだろうが、理想を追い求めるがあまりの早期退職ならば、甚だ頼りない話である。蒔かぬ種は生えぬのが世の道理だ。
お道では、とりわけ若い時分に伏せ込みの大切さが諭される。中山正善・二代真柱様は「他日に備えての伏せ込み、基礎工作は、地味であり、他人よりの観賞には当らない場合が多い」としたうえで、末代に変わらぬ喜びの理を、わが胸に伏せ込むのであると示された(「青年会の誕生説話とその使命」)。
信仰者にとって、日の当たらない地道な日々の積み重ねこそ、将来における開花結実に欠かせない道のりである。働き方に限らず選択肢の多様な現代こそ、結果に逸ることなく、まずはご守護の世界に生きる喜びを胸に抱くようにとの訓示を、あらためて胸に刻み直したい。
(春野)