米の関税問題を教えに照らし – 視点
2025・9/10号を見る
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昨年から続く、お米の価格高騰の影響もあり、韓国から日本へのお米の輸出が急増した。今年の年間輸出量は過去最大だった2012年の輸出量を大幅に超えるようで、関税分を上乗せした価格でも競争力がある状態になったことが主な要因とされる。
ところで昨今、関税という言葉を耳にすることが多くなった。おそらく世界規模で起こっている現象であろう。その背景には、アメリカ大統領が進めている相互関税を主とした関税強化による国内産業の保護政策がある。ちなみに、日本からアメリカへの輸入品に関しては、当初25パーセントの関税が課せられることになっていたが、両国の間で協議した結果、15パーセントの相互関税となった。
他方、筆者の住むブラジルの場合、当初は一律10パーセントの相互関税のみだったのが、8月に入ってから、航空機やオレンジジュースなどの例外はあるものの、アメリカへ輸出する全品に対して最大税率50パーセントの関税が発動した。なかでもブラジル産コーヒーには最大税率が課せられており、現在ブラジルが世界へ輸出しているコーヒーの34パーセントをアメリカが輸入しているため、「スターバックス」など有名チェーン店での価格高騰は必至とされ、コーヒー消費量の多いアメリカ人にとっても大きな打撃となる。国内産業を保護するための関税強化が、逆に国内の消費者や事業者の悩みの種にもなってしまっているのである。
翻って、教祖は「商売人なら、高う買うて安う売りなはれや」(『稿本天理教教祖伝逸話篇』104「信心はな」)と教えられた。すなわち、品物を仕入れるときは、問屋を倒さないよう比較的高く買い、顧客に対しては自分の利益を少なめにして比較的安く売る。そうすることにより、問屋も立ち、顧客も喜び、その理で自分の店も立つという意味である。
国家レベルの経済政策を、単純に問屋と顧客の間に立つ商売人と同等に考えることはできないが、教祖の教えを一人ひとりが、さらには国のかじ取りを担う人間が実行できれば、世界中の国々が共に栄える道が開けるのではないか。
(村田か)