【AI音声対象記事】
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二ッ ふじゆうなきやうにしてやらう
かみのこゝろにもたれつけ
「みかぐらうた」九下り目
先日、長男が帰ってくるなり、綿毛のついたタンポポの花を見せてくれました。帰り道で摘んできたようです。「風通しの良いところに置いておこうね」と言うと、綿毛を大事そうに両手に包んで庭へ出ていきました。
小学校の宿題に「音読」があります。その日の晩、長男が読んだのは「たんぽぽのちえ」という教材でした。
「春になると、タンポポの黄色い、きれいな花が咲きます……」。数日経つと花はしぼんで倒れますが、「枯れてしまったのではありません。花と軸を静かに休ませて、種にたくさんの栄養を送っているのです……」。やがて綿毛ができると「倒れていた花の軸が、また起き上がります。そうして背伸びをするように、ぐんぐん伸びていきます」「背を高くするほうが、綿毛に風がよく当たって、種を遠くまで飛ばすことができるからです……」。
一見、風任せのようでも、自ら生き、仲間を増やすための知恵がちりばめられた生態にふれて、ふと心に浮かんだのが掲出のお歌です。
難儀不自由を耐え忍ぶように一歩、一歩と前進する営みを経て、をやの心にもたれようと上体を反らせる手振りは、倒れても明日を見据えて種を育み、風の恵みを目いっぱい受けようと背伸びをするタンポポの姿に重なって見えます。
教会の庭に放たれた綿毛は、5月の風に乗って、どこまで飛んだでしょうか。春に黄色い花を見つける楽しみができました。
(榊)