「感謝 慎み たすけあい」を胸に世界の不可能を可能に変えていく 航空エンジン研究者 有澤秀則さん – ようぼく百花
2024・7/24号を見る
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航空エンジン研究者
有澤秀則さん
51歳・豊原分教会ようぼく・神戸市
航空・産業用ガスタービン技術に関する世界最大級の国際会議「ASME(アメリカ機械学会)Turbo Expo」。その航空エンジン部門で、日本人初となる2回目の「Best Paper Award(最優秀論文賞)」を受賞し、世界の航空業界に大きなインパクトを与えたようぼく研究者がいる。大手重工メーカーで研究開発に携わる有澤秀則さん(51歳・豊原分教会ようぼく・神戸市)は、世界最高難度の航空エンジンのオイルマネジメントを成功させ、航空機の低燃費化を実現。さらに、これまで不可能とされてきた航空用ギアシステム内の現象解明を成し遂げた。お道の信仰を支えに、航空エンジンの研究者として世界の第一線で活躍する有澤さんが感じる”ご守護の世界”とは――。
有澤さんが勤めるのは、日本のみならず、世界の産業や経済を支えるモノづくりをリードする大手重工メーカー。各分野の研究者やエンジニアが、精力的に研究開発に取り組んでいる。
「航空機は社会経済の発展に必要不可欠なインフラである一方、燃料の高騰や地球温暖化への対策が強く求められている」と、同社技術研究所特別主席研究員の有澤さんは力説する。「航空エンジンの高効率化による低燃費の実現」というミッションを果たすべく、日夜研究に努める。
「働く中で、さまざまな困難や問題に直面したが、『感謝 慎み たすけあい』を意識し、自分一人では”細い幹”でも、親神様のご守護を頂き、仲間の協力を得て”太く巻いてもらえる人”になることを心がけるうちに、実力以上の成果を挙げることができたように思う」
教会の月次祭参拝を心に定め
「学生時代から機械工学が得意だった」。名古屋大学工学部へ進学し、修士課程を了えてのち、自身の得意分野を生かすべく現在の会社に入った。
信仰初代。2003年、寺尾真木夫・豊原分教会長(55歳)の妹・真琴さん(52歳)との結婚を機にお道の教えを知った。その後、教会で参拝することはあったが、「自ら積極的に信仰を求める気持ちはなかった」と振り返る。
2年が経ったころ、「急性小脳炎」を発症。1カ月を超える入院生活が続き、一時は歩行困難になるほど悪化したが、寺尾会長の懸命なおたすけにより、後遺症が残ることなく回復した。
この節を通じて、「自分中心だった心の向きが、少しずつ神様のほうへ向くようになった」と語る。
「それまでは”論理の世界”に生きてきた私に、親神様は”信仰の世界”を説得性を持たせてお見せくださったと思う」
復職後、さまざまな研究成果を挙げるなか、日本の航空ギア技術を高める国家プロジェクトに参加することに。求められたミッションは、世界最高難度の航空エンジンのオイルマネジメントを実現することだった。
難しい研究だったが、同社の航空用ギアシステムにおける半世紀以上の歴史に裏づけられた経験などを活用し、世界で初めてオイル挙動の把握を可能にした。また、航空用ギアに適切な囲いをつけることにより、燃費効率を約1%改善。1年かけて、世界初となる画期的なオイルマネジメント技術を開発した。
こうしたなか、所属教会の部内の若いようぼく二人が「布教の家」を志願することになり、月次祭の奉仕者が少なくなった。有澤さんは「これからは週末だけでなく、平日も参拝しよう」と心に定め、翌月の月次祭の日、初めて仕事を休んで参拝した。
翌朝、有澤さんのパソコンに1通のメールが届いた。英語で書かれたそのメールは、先のオイルマネジメントの技術論文が、「ASME Turbo Expo 2009」の「最優秀論文賞」を受賞したことを知らせるメッセージだった。
「受賞に値するとは全く思っていなかった。心定めを実行した翌日に吉報が届いたことに、親神様・教祖の温かい親心を感じるとともに、教会につながって心の向きを変えていく中で、結構にお連れ通りいただけると実感した」と述懐する。
大教会と地域の役も担って
さらに、有澤さんに課せられた次のミッションは、航空用ギアシステム内で起きている物理現象(オイルと空気の挙動)を解き明かすことだった。
「NASA(米国航空宇宙局)ですら解明できていない”物理現象のブラックボックス”への挑戦。私自身、正直言って絶対に不可能だと考えていた」
世界の不可能を可能にする研究は挫折の連続だった。先の見えない暗闇が続くなか、有澤さんを救ったのは「感謝 慎み たすけあい」の言葉だった。
「研究が迷走を極めると私自身の心も乱れていく。そんななか、『感謝 慎み たすけあい』を意識すると、どれだけ複雑な問題も、親神様が用意してくださっている真実は一つであり、まずは自らが通る道筋をしっかり定め、ひたむきに取り組もうと思い直すことができた」
以来、研究の協力者には「感謝」の思いを形にして返すことを意識した。また、自らの理論が間違っていたときは「慎み」の心を忘れず素直に非を認め、多岐にわたる専門知識についてのアドバイスを他分野の技術者や大学教授らに求めた。そして「たすけあい」の精神で仲間と共に真摯に問題に向き合い続けていくなか、停滞していた研究が少しずつ前へ進み始めたという。
研究に没頭する傍ら、16年には大教会の布教部員の御用を拝命した。神様のお導きを感じた有澤さんは、自らの発案で「おさしづ」を題材にした信者向けのメール配信をスタート。現在まで登録者数150人、配信回数は370回に上る。また、身上に悩む職場の同僚に登録を促すなど、自分にできる布教活動にも力を入れている。
さらに17年には、自身が暮らす地域の自治会長が担い手不足で不在だったため、自ら立候補。積極的な声かけや戸別訪問、催し物などを実施し、地域の人たちとのつながりを強めていった。こうした取り組みを通じて地域の信頼を得、「こどもおぢばがえり」には町内の数人の子供たちが参加しているという。
「いま思えば、大教会の御用や地域の役割を担ってきたことが、回り回って仕事上の良い成果を残すことにつながったと思う。人を喜ばせることが、自らの喜びにつながっていくと信じる」
技術的側面から陽気ぐらしへ
2023年、研究ミッションを無事に完遂した。費やした年月は14年以上に及ぶ。長い模索の末に、不可能とされたギアシステム内のオイルと空気の物理現象を解明したことは、世界の航空業界に大きなインパクトを与えた。
また同年4月、研究内容を軸にした論文が審査を通過し、東京大学大学院の工学博士の学位を取得。さらに6月、「ASME Turbo Expo 2023」の航空エンジン部門で、自身2回目となる「最優秀論文賞」受賞の快挙を立て続けに成し遂げた。
受賞の報告を受けた寺尾会長は「有澤さんの活躍を見るたびに、おぢばと息一つであると聞かせていただく教会につながることの大切さを感じる。これからも『感謝 慎み たすけあい』の生き方を、職場や地域に広げてほしい」と笑顔で話す。
有澤さんは「どれだけ仕事が忙しくても、教会につながり、教えを拠り所に生活すれば、親神様・教祖にお喜びいただき、仕事や私生活のうえに必ず大きなご守護を頂戴できると実感している。会社の皆さんや教会の方々から受けた大きなご恩に報いようとして、論文を世に送り出せたことを誇りに思う」と話した。
◇
今日も新たな技術を生み出すべく研究に没頭する有澤さん。その眼差しは、すでに「ギアシステムの耐久性向上」という次の目標に向かっている。
「社会に恩恵をもたらすだけでなく、陽気ぐらしをお求めになる親神様の思召に沿った研究開発をしていくことが、ようぼく研究者の使命だと思う。これからも教会につながり、社会の役に立てるよう、そして世界中の人々が笑顔になれるような研究開発を目指して、技術的側面から陽気ぐらしの世界に貢献していきたい」
文=久保加津真
写真=嶋﨑 良