水害の伝承に力を尽くす 「平成30年7月豪雨」の被災地
「平成30年7月豪雨」で甚大な被害に見舞われた岡山県倉敷市真備町で先ごろ、「水害伝承の展示会」が開催された。これは、4年前の真備町の状況や水害の教訓を後世へ伝えるために企画されたもの。展示会の実行委員長を務めた黒瀬正典さん(69歳・志茂道分教会長・倉敷市)は、豪雨発生の直後から真備町の復旧に協力するとともに、水害の伝承にも力を尽くしてきた。ここでは、黒瀬さんの活動とともに、展示会の様子を併せて紹介する。
40年ほど前、災害救援ひのきしん隊(災救隊)岡山教区隊の副隊長(当時)を務めた黒瀬さん。一方、真備町内の小学校のPTA会長など、地域の役職も積極的に務めてきた。
また、平成17年の市町村合併を機に、岡田地区まちづくり推進協議会の会長に就任。ひのきしんの精神で、地域の祭りや運動会などのイベント運営にも協力してきた。
こうしたなか、4年前の7月に豪雨災害が発生。真備町内に甚大な被害が出るなか、黒瀬さんは最大2,000人が避難した「岡田小学校避難所」の運営を担当。毎朝6時に避難所へ足を運び、食事や物資の配布、校内の清掃や除草作業を行い、約4カ月にわたって避難所の運営に尽力したほか、ストレスを抱える避難者の声に耳を傾け、心に寄り添う活動を心がけてきた。
避難所の閉所後は、防災の意識向上を促す冊子を、協議会の会員と製作。水害の教訓を胸に、防災に関する研究を継続しながら、地域の復興・支援活動に力を尽くしてきた。
災救隊の活動写真も展示
水害から4年経つなか、半年前、真備町の水害の歴史と水害の教訓を後世へ伝えるための展示会が同町内の公共施設で実施されることに。実行委員会の立ち上げに際して、これまでの防災への取り組みや地域貢献などへの実績から、黒瀬さんが実行委員長に任命された。
以後、実行委員会では展示会の開催に向け、地域住民から被災時の写真や映像などの資料を広く募集。チラシやポスターなどを各地域へ配布したほか、SNS(ソーシャル・ネットワーキング・サービス)なども活用して町民に協力を呼びかけた。その結果、3,000枚を超える被災当時の写真が集まったほか、映像や資料、報道記録なども数多く寄せられた。
迎えた展示会初日、会場内に掲示された写真は約1,000枚。被災当時の様子や復興の軌跡が時系列やテーマ・団体ごとに並べられた。また、災救隊が現場で救援活動に従事した記録を紹介するコーナーも設けられた。
期間中、県内外から1,820人が訪れ、地元メディアなど8社が報道した。
展示会を訪れた伊東香織・倉敷市長は「今回の展示会は、水害の歴史を伝えていくうえで大きな一歩になった」と述べた。
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黒瀬さんは「展示会の実現に向け、行政や地域の方々と一手一つに活動できたことをうれしく思うとともに、協力してくださった方々へお礼を申し上げたい」と語った。