米国大統領選への一つの視点 – 視点
2024・9/4号を見る
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世界が注目するアメリカ大統領選は、民主党大会を終え、いよいよ佳境に入ってきた。6月末のテレビ討論会でのバイデン大統領のつまずき、トランプ候補への銃撃事件、直後の共和党大会でのトランプ氏の復活、バイデン大統領からハリス副大統領への民主党候補の交代、そして党大会以降の民主党の巻き返しと、この2カ月間で状況は目まぐるしく展開してきた。
今回の民主党大会は、多くの点で7月の共和党大会とは対照的だった。米国の現状と未来について、共和党のトランプ候補が悲観的な現状認識から分断を助長するような言葉を発したのに対し、民主党のハリス候補は、歓喜溢れる聴衆に向け、包摂的・未来志向的な“希望”のメッセージを強く打ち出した。両者の人柄や主張への賛否は措くとしても、一見、多くの共感が集まるのは後者のように思えるだろう。
だが実際には――民主党が持ち直しつつあるとはいえ――両候補の支持率は現時点でも拮抗している。米国の有権者のほぼ半数が、なおもトランプ候補を支持しているという事実からは、社会的存在としての人間心理の本質の一端が垣間見えてくる。
人間は、必ずしも楽観的で包摂的な理想にのみ惹かれるわけではない。逆に、怒りや妬みといった否定的かつ敵対的な感情によって強く動かされることも少なくない。今回の民主党大会のように、祝祭的な高揚感の中で共有される体験は、一時的な「非日常性」という性格を持つ。
一方で、2016年以降、いまなお続くトランプ人気に象徴されるように、否定的な感情はむしろ往々にして、日常的・持続的に抱き続けられるものである。トランプ候補支持の背景には、複雑な経済的・社会的課題があるにせよ、人間はやはり感情的な生き物である。だからこそ、今後の選挙の趨勢とその結果も最後まで分からない。
翻って、私たち道のようぼくは、日々の生活の中で、ほこりとして教えられる心づかいを省みながら、生かされている喜びを味わい、さらにそれを他者へ伝える努力を続けていくことが求められている。この道の教えの“希望”のメッセージは、各々の日常生活の積み重ねの中で培われ、地道に継承されていくものだろう。
米国大統領選の両候補者の言動と人々の反応を“他山の石”としつつ、あらためて自らの信仰について振り返りたい。
(島田)