「こんなはずじゃ…」子育てに悩んだ日々 – わたしのクローバー
三濱かずゑ(臨床心理士・天理ファミリーネットワーク幹事)
1975年生まれ
「やるかやらないかも、自由に決められたらいいのに……」
長女が小学校に入学してから十数年、夏休みが終わりに近づくころには、いつもため息をついていました。
自由課題は“親の宿題”
終業式を前に持って帰ってくる、山のような宿題。ドリルやプリントなどはさっさと済ませてしまうけれど、子供だけで自由に仕上げられるはずもない自由研究や読書感想文、工作などの自由課題は、結局“親の宿題”になってしまうこともしばしばです。
夏休み明けの参観日に披露される作品。あまり熱心でなかった私は、子育てに対する親の情熱が測られているような、複雑な気分でいつも眺めていました。
小学校の課題に限らず、スポーツや習い事から受験に至るまで、「子供の人生は親の育て方次第」みたいな空気を息苦しく感じることがあります。親の育て方はもちろん大切ですが、子供自身が生まれ持った体質や性格、時代や社会、出会った友人や先生の影響のほうが、本当はずっと大きいのではないか。4人の子供を育てながら、つくづくそう思います。
核家族化が進み、地域の人間関係も希薄になり、子育てにおける親の責任は次第に大きくなりました。子育てのノウハウはネットで簡単に手に入るけれど、膨大な情報量のなかから何を選ぶかは自己責任。SNSで人と比較しやすくなった分、プレッシャーもより大きくなっている気がします。
笑って振り返れる日が
「こんなに大変なことを、大人はみんな平気な顔でやっているの!?」
自動車教習所で仮免許の試験に2回落ちたとき、心底驚きました。初めての子育てで行き詰まったときも、全く同じことを思いました。
心理士という仕事柄、子供についての知識は一応ありました。それでも、どんなに頑張っても思い通りにならないイライラや、投げ出したくなる気持ちは、自分が親になって初めて理解できました。「褒めて育てよう」「失敗から学ばせよう」などといわれる、“子供に優しい子育て”が、親にとっては全然優しくないってことも。
それまで相談で関わってきた親御さんたちを思い出しては、「なんていい加減な助言をしてきたことか」と、申し訳ない気持ちになります。その経験を糧に、正しいアドバイスよりも、まず目の前で悩んでいる人の気持ちが和らぐことを第一に、話を聴くようにしています。
子育ては、「こんなはずじゃなかった」の連続です。夜泣きやイヤイヤ期が終わると、思春期の親子バトルが始まる。子供が大きくなるにつれて、親の悩みもどんどん大きくなっていくような気がします。
けれども、あんなに悩み苦しんだ日々も、自分を見つめ直して成長するために必要な時間だったんだと、いまは懐かしく思い出します。相変わらずドタバタ続きの日常も、いつか笑って振り返れる日がきっと来るはずです。
末娘の小学校生活は残り半年になり、ようやく“親の宿題”から解放されました。けれども、親として人としての学びは止めることなく、まだまだ続けていかなければと思っています。