宗教学会の学術大会 親里で21年ぶりに
2024・9/25号を見る
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国内外から450人の研究者が参集
日本宗教学会(藤原聖子会長)の第83回学術大会が13日から15日にかけて天理大学を会場に開催され、国内外から450人を超える研究者らが参集した。同学会が親里で開かれるのは、平成15年以来21年ぶり。初日は公開シンポジウムが、14、15の両日には11の部会が開かれ、約200にも及ぶ研究発表があった。
親里で初めて宗教学会が開かれたのは、昭和26年の第11回大会。4回目の開催となる今大会は、天理大学宗教学科内に学術大会実行委員会の事務局を置き、準備が進められた。
13日、天理大学ふるさと会館で開会式が行われた。
あいさつに立った永尾比奈夫学長は冒頭、90年の歴史を数える日本宗教学会の学術大会を天理大学で開催できることを光栄に思うと述べた。そのうえで、自らも学生時代に宗教学の研究に勤しんだ経験などをもとに、信仰者と宗教研究者との間に存在する課題にふれ、「本大会によって、宗教学上のさまざまな課題や問題が整理され、科学的かつ学際的な研究がさらに推し進められ、深まっていくことを祈念している」と述べた。
この後、「宗教研究のインサイダーとアウトサイダー――信仰者の自己理解と宗教の学術研究をめぐって」をテーマに、公開シンポジウムが開催された。
最初に、東馬場郁生・天理大学教授が趣旨説明。宗教研究において研究者は、信仰者の自己理解を宗教の批判的考察に含めるべきとの意見がある一方で、信仰者の個人的な宗教の意味は尊重しつつも、研究するうえでは、信仰者と異なる解釈をするのは研究者の自由であるという主張もなされてきたと指摘。信仰者と研究者の関係について議題を提起した。
続いて、奥山倫明・東洋英和女学院大学教授、渡辺優・東京大学准教授、那須英勝・龍谷大学教授がそれぞれ研究報告を行い、ミラ・ゾンターク・立教大学教授がコメント。この後、4氏によるディスカッションが行われ、会場からも質問が寄せられた。
最終日15日には、井上護夫・天理大学宗教主事による神殿案内があり、約70人が参加した。
この日、初めて来訪したという山﨑洋史・仙台白百合女子大学教授は「初めて訪れたが、故郷に帰ってきたかのような安心感があった。人間にとって心の安らぎを求めることの重要性を感じた」と語った。
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藤原会長は「宗教に関する話題が世界的に増え、宗教研究がより重要になるなか、研究の発展を考えるうえで学術大会の持つ意味合いは大きい。天理大学は宗教学会において中心的な大学の一つ。公開シンポジウムでは、宗教団体が母体である大学ならではのテーマが選ばれ、大変有意義な議論の場になったと感じている」と話した。