母の強がり – わたしのクローバー
濱 孝(天理教信道分教会長夫人)
1972年生まれ
三人息子が巣立って
優しく思いやる言葉が、知り合いに会うたびにかけられる。
「寂しくなったでしょ」
初めは「そんなことないですよ」と答えていたが、最近はにっこり笑うだけにしている。
この春、末っ子の三男が天理高校入学で家を離れた。
7年前には長男が、その2年後に次男が、それぞれ天理高校進学で地元を離れて寮生活を始めたから、初めてのことではない。
どちらかというと、長男のときのほうが戸惑いがあった。ちょっと広くなった食卓に物足りなさを感じ、何か忘れ物をしているような感覚に陥ることもよくあった。
それは寂しさというより、元気にちゃんとやっているだろうか、友達はできたのだろうか、寮や学校生活に慣れただろうかと、心配ばかりが募る始まりだった。
遠く離れた場所にいる息子に、親として、してやれることは何だろう。あの子が元気に毎日を過ごせるために、私に何ができるだろう。
答えはすぐに見つかった。
私が毎日、陽気に暮らすこと。夫婦仲良く、楽しく暮らすこと――。
手の届かない場所にいる息子たち。私にできることは、神様にしっかり守ってもらえるように、私自身が毎日をきちんと生きることだ。
こちらがいい加減な生活を送りながら、息子には素直な良い子に育ってほしい、元気で健康的な生活を送ってほしいだなんて、あまりにもムシがよすぎる。
息子たちが親を思い浮かべるとき、笑顔の私たちであってほしい。お父さん、お母さんは相変わらず楽しそうだなと思っていてほしい。そのほうが、きっと彼らもいろんなことに頑張れると思う。心に浮かぶのが、いつも困り顔の母親では、何事にも全力で頑張りきれないだろう。
心はつながっている
長男は千葉で、次男は神奈川で、それぞれ目標に向かって忙しい学生生活を送っている。三男が大好きなスポーツをするために天理高校進学を決めたときから、家族は一番の応援団だ。全員が顔を合わせる機会は少なくなったが、心はしっかりつながっている。
きっと大変なことも、たくさんあるだろう。しんどい日だって、いっぱいあっただろう。どんな日だって、彼らの人生の貴重な一日だ。その毎日は、彼ら自身が親になったときに、必ず生かされると私は信じている。毎日を一生懸命に頑張る3人の姿に、私は元気をもらっている。
そんな私たちを、きっと神様はニコニコと見守ってくださっているに違いない。温かく見守られながら生きる毎日は、張り合いがあって素晴らしい。
だから、私は寂しくなんてない。これは決して母の強がりなどではない。