“ながらスマホ”厳罰化に思う – 視点
2024・11/13号を見る
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自転車運転中の携帯電話の使用と酒気帯びに対する罰則を強化した改正道路交通法が1日、施行された。今後は、停止中を除いて、運転中の通話や画面注視への罰則が強化され、酒気帯び運転とほう助(運転する恐れがある者に酒類を提供する等)にも罰則が科せられる。併せて、「運転者講習」(一定の違反行為を繰り返した者に受講が義務づけられる)の対象となる「危険行為」にも、先の二つが加えられた。
自転車による事故は近年、増加傾向にある。警察庁の統計によれば、2023年の自転車が当事者となった死亡・重傷事故7,461件のうち、7割超で自転車側の違反が確認された。なかでも、運転者が携帯電話を使用していた場合の事故件数は増えつつあり、原因のほとんどが画像目的使用(スマートフォンの画像注視など)にあるという。
いわゆる“ながらスマホ”をめぐる問題は自転車に限った話ではない。公共の場で歩きながらスマホを使用する姿を至る所で目にする。愛知工科大学の小塚一宏名誉教授は、画面を凝視している状態では視野の95%が失われるとの実験結果を報告している。今のところ罰則は設けられていないが、「自分だけは大丈夫」という慢心は厳に慎まねばならない。
ところで、歩きながらニュースをチェックするなど、複数の案件を同時に進めるマルチタスクが日常化している。その背景について、明治大学の堀田秀吾教授は、デジタル技術の進化と情報の氾濫により、人々が「何事もできるだけ早く処理したい」という思いに駆られていると指摘する。そのうえで、人間の脳はマルチタスクには向いていない、とも。並行して別のタスクに取り組むことで、脳内のストレスホルモンが増加して認知機能の低下や注意力の欠如を招き、かえってミスが増える。真に生産性を高めるには、限られた時間内で一つのタスクに集中して取り組むことが大切だという。
効率や生産性はさておき、信仰者にとって、些事にとらわれず、おたすけなどの実践に専心する姿勢は大切だ。わが身を忘れて相手のたすかりを願う真実を親神様はお受け取りくださる。
このたびの厳罰化をモラルや法律の域に留めず、心に余裕のないときこそ立ち止まり、自らの信仰姿勢を省みるよすがとしたい。
(春野)