「人生百年時代」の折り返しに立ち – わたしのクローバー
三濱かずゑ(臨床心理士・天理ファミリーネットワーク幹事)
1975年生まれ
年末に誕生日を迎え、40代最後の1年が始まりました。「人生百年時代」の折り返しを意識してしまいます。
一瞬を大切に
「今この瞬間を振り返ってみたときに、『あのころに戻りたい』なんて言わなくていいような、そんな10年後を生きていられたらいいですね」
高校の卒業文集の「私の10年後」のページに書いた言葉です。あれから30年以上が過ぎ、「50歳の節目に」と同窓会の案内が届きました。そのせいか、最近、高校時代の夢をよく見ます。
あのころ描いた未来からは程遠いけれど、戻りたいとは思わない。それは、今がそれなりに充実しているからだけではなく、受験や新入社員、出産や子育てを、もう一度やり直すのは大変そうだからです。
若いころは年末に手帳を選ぶのが楽しみでした。「来年はどんな1年になるだろう」とワクワクしたものです。「夢を叶える手帳」が流行ってからは、お正月に今年の目標をいくつも書き込んでいました。
子育てに追われるようになると、目標を考える時間さえ無くなり、いつからか手帳は家族の予定表と日記代わりになっていました。
「私の人生、このままでいいの?」と焦り、「時間術」の本を読みあさった時期もありました。けれども、読書にかけた時間に見合うだけの効果は得られず、“時短家事”や“マルチタスク”を強行した結果、体調を崩して入院。たどり着いた答えは、「身の周りで起こる出来事や過ぎ行く一瞬を大切に味わうことが、一番豊かな生き方なのだ」ということでした。
人生の棚卸し
昨年の秋、住んでいる集合住宅にインターネットの光回線が導入されることになり、工事のため、散らかり放題の家の中を片づけなければなりませんでした。
いいきっかけだと重い腰を上げたものの、「いつか使うかもしれない」と物を捨てられない私に、「今日まで使ってない物は、この先もきっと使わない」と言い放つ“断捨離推進派”の夫。またしても夫婦の価値観の違いが浮き彫りになりました。
積み重なった荷物の下からは、子供たちが小さかったころの写真や文集、思い出の品などが見つかり、片づけの手を止めて見入ってしまいました。
雑誌の切り抜きも大量に出てきました。いつか作ろうと思った料理のレシピや、ベランダ菜園のノウハウ、美文字の書き方等々。子育ての最中も、たくさんの「いつか」を心に抱いていた前向きな自分を思い出し、いつしか微笑ましい気持ちになりました。
思い返せば、今を生きることに精いっぱいで、後回しや先送りを積み重ねてきた30代から40代。「家は住む人の生き方を表す」とは、よく言ったものです。
工事は終わったけれど、片づけはもう少し続けてみよう。そして、見つけた「いつか」を一つずつ叶えていこう。
真新しい手帳の見返しに書き留めました。くせの強い文字で、「人生の棚卸し」と。50歳になる自分に向けた、ささやかな決意表明です。
なんたって「人生百年時代」。終活を始めるには、まだまだ早いのだから。