お菓子で子供たちを笑顔に 創業80年の駄菓子店を営む 今井菊栄さん – 新企画 年輪重ねて―“生涯現役”のよろこび
2025・3/19号を見る
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「人生100年時代」を迎えるなか、お道の信仰を胸に、社会や地域、教会の中で生き生きと活躍し、身も心も輝かす高齢のようぼくは少なくない。この新企画では、年輪を重ねてなお、“生涯現役”の喜びを味わう教友たちの姿を紹介する。
山梨市の笛川小学校の隣にある駄菓子店「今井商店」。店内に入ると昔ながらの駄菓子がズラリと並ぶ。
「こんにちはー」。2月某日、小学校の授業が終わった午後4時ごろ、児童二人が店に駆け込んできた。
「いらっしゃい」と、子供たちを出迎えたのは83歳の今井菊栄さん(83歳・笛吹川分教会ようぼく・山梨市)。ひと握りの小銭を手に、思い思いに駄菓子を手に取る子供たち。その様子を優しく見守る今井さんは「年を重ねる中で、店を辞めようと考えたことも何度かありました。でも、子供たちの笑顔が私の原動力になって、ここまで続けることができたのです」と微笑む。
心に寄り添う居場所に
創業80年。太平洋戦争終結の直前、山梨県内で疎開していた父・得三さんと母・はつゑさん(当時の笛吹川分教会長・根津智さんの長女)が、空き地でまんじゅうを売るお年寄りの姿を見て、「何かしないと食べていけない」と感じ、駄菓子や日用品の販売を始めた。以後、台風で家屋が倒壊するなど数々の困難を乗り越え、“町の駄菓子店”として親しまれてきた。
今井さんは、夫・武次さん(83歳・同ようぼく)を婿養子として迎えた際に名古屋へ移住したが、約50年前の父の出直しを機に地元に戻り、駄菓子店を継いだ。
「時代の変化に伴って駄菓子店の文化は少しずつ衰退しています。それでも、地域のつながりが薄い現代だからこそ、一つのお菓子をきっかけに、ちょっとした会話が生まれる“居場所”が必要だと感じます」
そう穏やかに話す今井さんが日ごろ心がけているのは、「子供の心に寄り添うこと」だという。
「誰にも相談できずに悩みを抱える子供が少なくありません。そんな子が店に来るたびに、何げない会話を交わす中でだんだんと心を開き、悩みを打ち明けることもあります。ひと声かけることを大切にしてきました」
夫婦そろって信仰実践
駄菓子店を営む傍ら、地元の中学校で学校司書として働いてきた。また、平成5年に地域の朗読サークルに入会して以来、月1回、笛川小学校の朝の読書時間に絵本を読み聞かせてきた。
2年前の11月、長年にわたる読み聞かせの活動を称えられ、小学校から感謝状が贈られた。
年輪を重ねてもなお、地域の子供たちのために力を尽くす今井さん。その日々を支えたのは、親神様の存在だったという。
「体が弱かった父は何度も命の危機に直面しましたが、母が教会に毎朝お参りし、神様にたすかりを願うなか、65歳まで長生きさせてもらいました。母の真実の信仰と、父に見せられたご守護を目の当たりにし、どんなときも親神様にもたれて通ると決めたのです」
結婚を機に信仰を始めた武次さんも「妻や義母の姿を見るうちに、お道の教えに自然と親しむことができた。いまでは信仰が日常に欠かせない」と語る。
所属教会の月次祭のひのきしんには、夫婦で駆けつける今井さん夫妻。また、今井さんは『天理いきいき通信』を地域の住宅に毎月配り続けているという。
「これまでを振り返ると、親神様が大難を小難に結構にお連れ通りくださっていたことに、あらためて気づきます。そのご恩に報いるためにも、夫婦そろって信仰実践を続けたいです」
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駄菓子の入った袋を手に帰路に就く子供を見つめる今井さんは「子供が喜ぶ姿が私自身の喜びになる――。これは何年経っても変わりません。これからも親神様にもたれきり、子供たちが求める限り、店を続けていきたいと思います」と満面の笑みで話した。