日本海側の豪雨被災地へ出動 – 災救隊
東日本の日本海側は8月4日、前線を伴う低気圧が停滞した影響で断続的に猛烈な雨に見舞われ、広範囲に甚大な浸水被害が生じた。こうしたなか、災害救援ひのきしん隊(=災救隊、橋本武長本部長)の各教区隊は、各地の自治体や社会福祉協議会(=社協)の要請に応え、深刻な被害が出た石川、新潟、福井の3県へ出動。ここでは、各教区隊の救援活動を紹介する。(8月17日記)
町内全域が浸水した町へ – 石川教区隊
石川県小松市では8月4日、記録的豪雨によって、同市中海町の梯川と支流の滓上川が氾濫。町内全域が浸水した。
翌5日、忠谷眞一郎・石川教区隊隊長(70歳・片山津分教会長)が同町を視察。同市ボランティアセンターと連携しつつ、住民のニーズを聞き取り、8日から10日にかけて同教区隊の第1次隊の出動を決定した。これに先立つ6、7の両日には、教区管内の教友有志が先発隊として活動することになった。
6日午前、先発隊の隊員たちは、同町で被災した民家を一軒ずつ訪ね歩き、ニーズを収集するために同市ボランティアセンターが作成したチラシを配布。午後からは、民家2軒で家財道具の搬出や庭に流入した汚泥の撤去作業に従事した。翌7日は、2軒の民家で家財道具の搬出と床下に流入した汚泥の撤去作業に取り組んだ。
住人の40代男性は「災救隊の皆さんが、家の中を埋め尽くしていた泥を大人数で手際よく撤去してくれたので、とても助かった。感謝してもしきれない」と話す。
8日からは、同教区隊が出動した。現場となる民家では被災当日、建物の2階付近まで浸水。また、庭には汚泥が堆積し、農具などの“災害ごみ”が大量に流入したという。
隊員たちは住人にあいさつし、要望を聞き取ったうえで、二手に分かれて庭のごみや流入した汚泥の撤去、倉庫内の農具の搬出作業に取りかかった。
気温33度の猛暑のなか、隊員たちは汚泥にまみれた庭の植木鉢を手際よく家の隣の畑へ運び出していく。搬出した植木鉢は陶器とプラスチックに分別。その後も庭に積もった汚泥を手作業で撤去した。
9、10の両日は、軽トラックで同町各所の災害ごみを回収し、集積場へ運搬する作業を担うことに。隊員たちは町内の民家を一軒ずつ回り、沿道に残された災害ごみをトラックに積み込み、集積場まで運び込んだ。
この後、12日から14日にかけて第2次隊が同町へ。災害ごみの運搬と民家の床下の泥出しを行ったほか、水害により道路が寸断されたことで孤立した同市中ノ峠町の民家でも、家財道具の搬出や床下の泥出しなどに尽力した。
忠谷隊長は「被災した人たちが少しでも早く、一人でも多くたすかってもらえるようにとの思いで迅速な対応を心がけた。隊員たちの専門的な知識や技術が、住人やほかのボランティアの人たちに喜ばれ、災救隊が頼りにされていると感じている。今後、地域のニーズに応えて教区隊や支部隊の出動を検討し、被災によって憔悴した人たちの心に寄り添っていきたい」と話した。
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なお先発隊、第1次隊、第2次隊で延べ87人の隊員が出動。市内7軒の民家で、家財道具の搬出や汚泥の撤去作業に従事した。
文・写真=加見理一
社協と連携し迅速支援 – 新潟教区隊
新潟県では、村上市や関川村などで床上・床下浸水などの甚大な被害に見舞われた。
新潟教区隊(吉澤清人隊長)は豪雨直後から管内の教会や県社協、「NPOにいがた災害ボランティアネットワーク」と連絡を取り合い、被害状況の把握に努めた。
こうしたなか、豪雨の影響で断水が続いていた村上市荒川地区の住人の「生活用水が足りない」という声を受け、8月6、7の両日に給水活動を展開。舘分教会(西濟治会長・胎内市)から提供を受けた計10.5トンの井戸水を、同地区周辺の住民へ届けた。
また7日には、関川村社協の職員らと事務局の立ち上げや具体的な救援活動について協議したほか、同村の被災現場でいち早く救援活動を開始した。
高橋正弘ボランティアセンター長は「センターがスムーズに運営できるのは、多数の出動経験を持つひのきしん隊からのアドバイスのおかげ。隊員の皆さんが迅速かつ的確に作業をこなしてくださり、とても助かっている」と話す。
8日からは、ボランティアセンターの要請を受けて同村へ出動。家屋に流れ込んだ土砂や、水浸しになった家財道具などを手際よく搬出した。
11日は湯沢地区へ。同地区では湯蔵川の氾濫により、一時は大人の背丈ほどの濁流が地区内の民家に押し寄せたという。
隊員たちは現場となる寺院に到着後、一般ボランティアと共に敷地内に流入した土砂の搬出作業に従事。気温が30度を越すなか、床下に溜まった土砂をスコップでバケツに詰めた後、一輪車で屋外へ。また、12日も引き続き、寺院での土砂の搬出を行った。
13日には、同村高田地区での救援活動を一手に任され、浸水した民家の床板はがしを行った。
吉澤隊長(47歳・新津分教会長)は「これまでの訓練や出動の経験と、県社協などとの連携を生かし、迅速に対応することができた。現場に出られるのは、家族など隊員を支えてくれる人がいるからこそ。普段から、出動する際に“行ってらっしゃい”と快く送り出してもらえるような通り方をすることが大切」と話した。
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なお、新潟教区隊は6日から14日までに延べ129人が出動。同村の13件の現場で、土砂や家財道具の搬出、床板はがしなどに尽力した。搬出した土砂は一輪車約450台分、家財道具は軽トラック73台分に上った。
文・写真=久保加津真
ボランティアの受け入れも – 福井教区隊
福井県南越前町では8月5日、豪雨の影響によって鹿蒜川が氾濫。六つの集落で床上浸水の被害に見舞われた。また、北陸自動車道などの主要な交通網が寸断された。
こうしたなか7日、吉長忠司・福井教区隊隊長(64歳・米松分教会長)は、いち早く同町社協と折衝。その後、社協の要請を受け、翌8日、福井教区隊が同町へ出動。一般家庭2軒で床下の泥出しなどを行った。
また、9日からは、同町上新道地区での作業を一手に任された。同地区のほとんどの住宅は1メートル50センチの高さまで浸水。また、生活用水として使用している用水路に土砂が流れ込み、河川につながる取水口から250メートルにわたってせき止められた。
同隊は6日間、用水路や家屋内の汚泥の撤去、水に浸かった家財道具の搬出のほか、給水活動にも尽力した。
さらに、「NPOふくい災害ボランティアネット」の東角操理事長の依頼を受け、ボランティアバスを利用して現地へ救援活動に訪れた一般ボランティアの受け入れにも協力。コーディネーターとして、11日から13日までの3日間で計216人のボランティアを受け入れ、現場で救援活動の指揮を執った。
吉長隊長は「身も心も疲弊している住民の方々のため、“スコップひとかきでも”という思いで実動させてもらった。また一般ボランティアの皆さん方も、この思いを共有してくださり、一手一つに救援活動を行えた」と語った。
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なお、8日から14日にかけて延べ64人が出動。計17軒の民家で救援活動に当たった。
石川、新潟の両教区隊の救援活動の様子を視聴できます。