猛暑のニューノーマル化に思う – 視点
2025・8/13号を見る
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私たちはいま、“灼熱の日本列島”を身をもって感じている。自然の揺らぎで起こっていた猛暑や冷夏が、2010年以降大きく変わったとされる。まさに、猛暑年が異常ではなく「普通」となった、「ニューノーマル」の幕開けと考えていいだろう。
近年の猛暑は、夏を通じて延々と酷暑の日が続き、ごく数日だけ「普通の夏らしい日」があるのみ。猛暑を理解するためには、特定の日の気象や特定の日の天気図を見るだけでは足りないようだ。
猛暑の要因の一つに、日本を含めた中緯度上空に吹く「偏西風」の蛇行があるとされる。偏西風は寒気と暖気の境目に吹き、北には寒気、南には暖気がある。偏西風がカーテンのように南北の空気を仕切っており、偏西風の北にいると寒く、南にいると暑いのだ。
その流れは、従来は蛇行が小さいパターンが多かった。これは通常の偏西風の流れで、少し南北に振れながら西から東へ吹く。
ところが、近年は偏西風が激しく蛇行する傾向がある。北に出っ張ったところにちょうど日本が位置し、そこに高気圧が留まることで、日本は暑くなっているという。夏の天気予報でよく耳にする「太平洋高気圧」が、これに相当する。太平洋高気圧はもともと日本よりも南東に位置しているものだが、偏西風の北への蛇行に伴って日本に張り出すようになっているのだ。
端的に言えば、日本列島の猛暑の夏がニューノーマル化してきた要因の一つには、偏西風が蛇行するようになり、暑い夏と直結する太平洋高気圧が日本列島に居座る事態が平常化したことにあるようだ。
さて、前述の説明でも分かるように、世界の異常気象は、火と水のバランスはもちろんのこと、地球を覆う大きな風の動きと密接につながっている。「火・水・風」のご守護によって、天候の変化や差異が生じてくるのだ。
異常気象をニューノーマルと受けとめる姿勢は大事だが、それに留まらず、人間がその欲望のままに構築してきた文明による自然からの摂取や、二酸化炭素の放出などによる悪影響を社会全体で認知し、自然界との共存を目指す生き方を知恵を絞って再構築していかなければならない。
「暑い。耐えがたい」という不足を、感謝と慎みの言動に置き換える日々を送りたいものだ。
(永尾)