天理時報オンライン

かけがえのない時間 かけがえのない場所 – わたしのクローバー


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2025・9月号を見る

三濱かずゑ(臨床心理士・天理教教養室(修養科)世話掛)
1975年生まれ

「今から5年、時間をあげるって言われたら、何学部を受験する?」

春から大学に通い始めた次女に突然尋ねられ、答えられませんでした。

学び直さなきゃだめですか?

書店を覗くと、「大人の教養」や「リスキリング」などに関連する本が山積みです。「学生時代、ろくに学んでこなかったでしょ」「時代に取り残されますよ」などと言われているようで、勝手にプレッシャーを感じています。

心理士の世界は日進月歩で、アップデートするのに精いっぱい。子育てが一段落しても家事からは解放されない。健康にも気をつけないといけないし、親の介護だっていつ始まるか分からない。考えだすと、言い訳ばかりが浮かんできます。

思い返せば大学時代、「社会人枠」で編入してきた同級生は、皆さんとても勉強熱心でした。家庭と学業を両立させるには、さぞかし苦労も多かったことでしょう。

「同じ年の同級生たちも、学び直しを始めているのかしら?」なんて思いながら、10年ぶりに開催される天理高校の同窓会に、参加の返事をしました。

高校時代はテストのたびに、偏差値に一喜一憂していたのに、今では「50歳 同窓会 服装」で検索を繰り返し、平均値を追い求めている私。そのギャップに、少し笑えました。

私たちはどう生きるか

「50歳になった? まだ40代?」を挨拶代わりに始まった同窓会当日。各地から同級生が寄り集いました。

教会長を務めながら宇宙研究を続けている男子もいれば、学生時代に学んだ演劇を再開し、朝ドラ出演を目指している女子もいて、その心意気に大いに感化されました。

お酒が進むにつれて、体調や家族関係などの悩みも吐露されるようになり、涙を浮かべながらも笑顔で語り合う輪がいくつもできました。

終盤、幹事が編集してくれたスライドショーが流れ、高校時代が蘇ってきました。朝の参拝に始まり、授業やクラブ活動、学校行事や夏休みの「こどもおぢばがえり」。そして、病と闘いながら懸命に生きた亡き友の言葉。その全てが、私たちの人生を支える絆と“陽気ぐらし”の心を育んでくれた、かけがえのない3年間だったのです。

私が勤めている修養科は、天理教の教えを元に、人間本来の生き方を学ぶ場所です。社会的立場や経験、経歴の異なる老若男女が、寝食を共にし、互いにたすけ合って心の修養に励みます。病気やさまざまな悩みを抱えて来られる方も大勢います。

イラスト・ふじたゆい

たった3カ月ですが、巣立っていく一人ひとりにとっても、人生を支える、かけがえのない場所になれていますように。そう願いました。

「還暦は遠いから、次は5年後に」と約束して別れた帰り道、娘の質問を思い出しました。この5年間を私はどう生きようか。その気になれば、大学を受験して卒業できるだけの長さです。

けれども今は、修養科で何千通りもの人生と向き合いながら、共に悩み、心理士としての学びを重ねていこうと思います。人生が変わり、運命が変わる場所を、守り続けていくために。

※修養科……親里(奈良県天理市)で3カ月間、親神様の教えを学び実践しながら、人間の本当の生き方を学ぶところ。満17歳以上であれば、だれでも入ることができます。


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