特別展「世界探検の旅」盛況裏に閉幕 参考館
2025・10/8号を見る
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来場者7万5000人を超える
既報の通り、天理参考館(橋本道人館長)は7月26日から9月23日にかけて、「世界探検の旅――美と驚異の遺産」(主催=奈良国立博物館、天理参考館、日本経済新聞社、テレビ大阪)を、奈良市の奈良国立博物館(=奈良博)で開催。奈良博所蔵の仏教美術作品をはじめ、参考館が誇る世界各地の民族・考古資料を目当てに、7万5070人が来場した。ここでは、特別展の内容を振り返るとともに、中川あや・奈良博広報室長の談話を紹介する。
奈良博で初の民族文化展となった今展は今年、奈良博が開館130年を、天理大学が創立100周年をそれぞれ迎えたことを記念して、「約6000年に及ぶ人類史の探求」をコンセプトに開催されたもの。奈良博所蔵の仏教美術作品に加えて、約4000年前の王の姿を模した「グデア頭像」や、ニューギニア島に伝わる儀礼用の仮面「マイ」など、世界中から収集された質・量ともに国内有数のコレクションから、厳選した資料475点が展示された。
53日間にわたる会期中、世界各地の貴重資料をひと目見ようと、全国のファンや外国人観光客らが連日詰めかけた。また、全展示品が撮影可能なことから、SNSを通じて話題が広まり、終盤にかけて来場者数がさらに増加。最終的に、主催側の想定を上回る7万人超が訪れ、図録も完売するなど盛況のうちに幕を閉じた。
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なお、来場者数5万人を突破した9月4日には、奈良博西新館ロビーで記念セレモニーが行われ、井上洋一・奈良博館長と橋本館長から5万人目の来場者に記念品が贈られた。
〈談話〉
博物館の本来あるべき姿
中川あや(奈良国立博物館広報室長)
特別展「世界探検の旅」には、開幕前に想像していた以上の反響を頂き、担当者一同大変驚いています。特に会期後半から来場者が一段と増え、最終的に7万5000人を超える方々に来場していただきました。この数字から、奈良国立博物館としても大きな注目を集めた展覧会であったと受けとめています。
今展の魅力は、個々の作品そのものよりも、異なる時代や地域で生み出された資料を見比べる中で、時空を超えた人類に共通する創造力や美意識、信仰心を見いだせるところにあると考えています。天理参考館から出陳された資料は、半数以上が奈良博には未所蔵のもので、オリエント、古代中国、イスラム、エジプトといった地域の考古資料も充実しており、今展は参考館のご協力なくしては成立し得ませんでした。
特に、20世紀に現地で一括収集された生活資料はこの先、世界的に見ても貴重な存在になると思います。考古資料についても、人類史の広がりを語るに足る幅広いコレクションであり、伏羲女媧図や成吉思皇帝聖旨牌、ミイラ包みなど、極めて珍しい資料が含まれているのは特筆すべき点です。
会場で最も心に残ったのは、小学生や中学生が展示物を前に歓声を上げたり、真剣に見入ったりする姿です。世界との出合いに驚き、感動する姿は、博物館の本来あるべき姿をあらためて思い起こさせてくれました。このような機会を下さった天理参考館と貴重な資料の数々に心から感謝申し上げます。
天理参考館は、まさに人類史を凝縮して示すことのできる稀有な展示施設であり、博物館の原型とされる「Wunderkammer」(驚異の部屋)そのものだと思います。今後も、若い方々の知的好奇心を呼び起こし、新たな意欲を生み出す場としての役割を果たしてくださることを願っています。