盗難防止 – Well being 日々の暮らしを彩る 12
2025・11/12号を見る
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自転車に乗るときはヘルメットを着けている。出先の駐輪場では前かごに入れ、盗難防止のワイヤー錠をかける。以前、置いていたヘルメットをくずかご代わりにされ「こういうことがあるなら、持っていってしまう人もいるかも」と用心するようにした。
ヘルメットのあごひものY字部と前かごのふちにワイヤーを通す。本来は自転車の盗難防止に使うもので、太くて頑丈。差し込んで回すカギで施錠する。
そのカギが、ある晩差し込もうとすると、ない。手の中にあるのは、深夜営業のスーパーで買い物してきたレジ袋、駐輪カード、自転車そのもののカギ。
歩いてくるとき何かが地面に当たるような、かすかな音がしたのである。タイヤの間にかがみ込んで探すが、暗くてわからない。もしかすると家にスペアのカギがあるかも。
そのまま漕ぎ出したもののヘルメットなしでは頭が守られていないようで不安だ。かつてはつける方に違和感があったが、いつの間にか慣れ、逆転していた。
無事帰宅したものの、ひそかに期待したスペアはない。このままでは困る。ヘルメットも前かごも使えない。ヘルメットで前かごがふさがり、買ったものもハンドルに提げてきたほどだ。「仕方ない、ワイヤーを切るか」。
工具箱を出してきたが、どれも歯が立たない。さすが、自転車そのものの盗難を防止するだけのことはある。
代わりに、ワイヤー錠を買ったとき付いてきた紙が工具箱の中にあり、型番が印刷されていた。これは助かる。同じ型番のものを買えば、同じカギがついてくるはず。
通販で注文すると翌日届いた。配達の早さに感動。紙をとっておいた自分に感動。しかし……。
合わない。ビクとも回らない。ワイヤー錠とはかくも厳重なものなのか。繰り返しになるが、さすが自転車の盗難を防止するだけのことはある。「仕方ない、あごひもの方を切るか」。少なくとも前かごのふさがり問題は解決できる。
ヘルメットは実はワイヤー錠より値が張り、あごひものことだけで使えなくなるのが、もったいなくはある。しばし眺めて考えた。ヘルメットの製造工程を思えば、ひもは後から取り付けるだろう。ならば、後から外せるのでは。
予想的中。詳細はそれこそ盗難防止のため書けないが、切らないで簡単に外せた。頑丈かつ厳重なワイヤー錠でくくりつけていた意味があったのか?
今は単に前かごの中に置いている。持っていく人がいないことを祈り、万が一いたら「それはそのとき」のつもりで。










