優しさあふれる 馬との触れ合い – わたしのクローバー
辻 治美(天理教甲京分教会長夫人)
1969年生まれ
天理キャンプ
私たち夫婦は子供を4人授かりましたが、末っ子の三男は重度障がいのある医療的ケア児で、今年15歳になりました。
生まれてすぐに癲癇を発症し、発作がひどくなると治療のために長期入院を繰り返しました。退院後、療育施設に母子で通うようになり、そこで同じように障がい児を育てるママ友たちと出会いました。
園によく顔を出していた主人は、「パパたちも繋がってもらいたい」とママ友から相談され、飲み会を開きました。そして、それをきっかけに「おやじの会」が誕生しました。
入院と隣り合わせの介護中心の生活で、家から出られない家庭が多く、パパたちは家族を楽しませてやりたいという思いを持っています。そこで主人を中心に、おやじの会のメンバーが力を合わせ、天理で一泊の家族旅行をすることになりました。
この旅行は「天理キャンプ」と銘打って、平成29年から毎年、5月の母の日に合わせて開催し、今年で8回目となります。天理でサポートしてくれるメンバーも温かく迎えてくれて、バルーンアートや缶バッジ作り、いちご狩りなど、いろんなイベントを楽しませてもらいました。
ホースセラピー
今年は、ホースセラピーを実施している天理大学の馬術部で、馬との触れ合い体験をしました。
ホースセラピーには、乗馬による運動効果のほか、馬と触れ合うことによる癒やしの効果があり、障がいを持つ人や、ストレスや不安を抱える人、不登校や引きこもりで悩む人への支援方法として期待されているそうです。引退した競走馬の殺処分減にもつながり、天理大学では令和元年度からホースセラピーの取り組みを始め、現在、不登校の子供たちと馬との触れ合いの機会を設けるなどの活動を展開しています。
当日は、馬術部員に加え、社会福祉学科の先生やボランティアの学生など30人近くが集まって、私たち8家族を迎えてくださいました。
馬場に下りるために重たい車いすを持ち上げてくれたり、小さい子の世話をしてくれたりと、学生さんたちの優しさに心が温かくなりました。
目の前の馬に「お馬さん大きいなあ!」と驚きの声が上がります。息子の手を取り、馬の鼻筋を手の甲でそっと撫でてみました。車いすの息子はじっと馬を見つめ、馬もビー玉のように透き通った大きな目で息子を見つめています。互いに心を通わせているような優しい時間が流れました。そばで見ているだけで心が癒やされていく、不思議な感覚でした。
馬にニンジンをあげるときは、迫力ある口の動きに手まで食べられそうで、「うわー!」と驚いて泣き出す子もいましたが、馬は暴れることなく、じっと子供が落ち着くのを待ってくれていました。
優しさあふれる空気に包まれて、気づけば、みんながすてきな笑顔になっていました。多くの家族とともに、また一つ、かけがえのない思い出を作ることができました。
来年はうま年。新しい年がホースセラピーの世界のように、多様な命が尊重され、互いに支え合う平和な年になりますように。




