モノの寿命 – Well being 日々の暮らしを彩る 14
2026・2/11号を見る
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家にいてなんだか薄ら寒さを感じた。暖房はつけている。重ね着もしている。なのに背中がすうすうするような。風邪の引きかけかと体温を計ると平熱。それらしい症状も現れない。
「年をとると寒さに弱くなるのか」と暖房の設定を上げ、インナーをもう一枚着込んで、別の可能性が頭をよぎった。
インナーが劣化しているのでは。発熱保温の機能を持つ素材のインナーだ。その機能が落ちてきているのでは。破れてなどはいないが、腕を通すとき指先がよくつっかかるところには小さな穴が。生地の表面もそそけ立っている。そこそこ長く着ていそうだ。こういう物にも寿命はあるのか。
調べると、くり返しの洗濯や、しまっておくだけでも経年により、繊維が変質するそうで、三年での買い替えが推奨されている。そんなに短いとは。
三年と言われても、いつ買ったか覚えていないが、同様の人は多いのか、製造年の確認方法の情報が出回っていた。そのメーカーでは、商品タグに並んだ数字のある部分が西暦の下ひと桁を表すという。四なら二〇二四年、三なら二〇二三年、二なら二〇二二年と例示されている。
知らなかった。
この際だから家にある同メーカーのインナーを総点検することに。セータの下に着るもの、ズボン(私の世代だとパンツよりなじみがある)の下にはくもの、薄め、厚めと幾種類もあるのだ。抽斗から引っ張り出す。
最初が「九」。いきなり謎の数字だ。二、三、四といった例からはかけ離れている。もしかして二〇一九年? 西暦の下ひと桁の原理に基づけばそうなる。コロナ禍より前から着ているわけか。その後も「九」「〇」「八」が続出。タグがすり切れかけて、数字が読めないものも。
「五」が出た。二〇二五年とは、めずらしく新しい。にしては生地がそそけ立っている。記憶をたどっても、去年は買わなかったような……ということは二〇一五年? 十一年も着ているとは。着る人も古びるわけだ。
われながらモノ持ちのよさに驚いた。が、暖かさを感じにくくなり、暖房の設定を上げたり、一枚では足りずもう一枚着たりするようでは、節約とは言えないのでは。
試しに一枚買ってみると、こうも違うかと思うほど暖かい。三年寿命説は、販売を促進するために流布されたのではと、ひそかに疑っていたが、考えを改めた。
モノには効果を得られる年数がある。持たせるのはほどほどに。幸いその商品は店舗で回収しリサイクルするとわかって、節約家の私は少しホッとしたのだった。






