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巣立ちの季 – わたしのクローバー


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2026・3月号を見る

濱 孝(天理教信道分教会長夫人)
1972年生まれ

癒やされる場所

天理高校への進学で、地元の中学を卒業してから家を離れている3人の息子たち。帰省してくると3人とも、必ずすることがある。それは、家の近くの諏訪湖を、ぐるっと一周ドライブすることだ。

イラスト・ふじたゆい

まだ息子たちが幼かったころ、どこかへ遊びに行く代わりに、時々車に乗せて諏訪湖を一周していた。春なら沿岸に咲きそろう桜を眺め、夏には車から降りて水切りの石投げに夢中になり、秋は紅葉を楽しみ、冬は飛来した鴨や白鳥を見て、それぞれの季節を楽しんだ。わざわざ遠くへ出かけなくても、富士山を眺めながら広い空を満喫できる、とても素敵な場所なのだ。

嫁いできてから、なにかくじけそうになると一人で、車で諏訪湖を一周した。道が混んでいなければ30分ちょっとのドライブ。一杯のコンビニコーヒーを飲みながら、心を落ち着かせた。

豊かに水をたたえる諏訪湖。どっしりと雄大な八ヶ岳や日本アルプスの山々を見ていると、ずっと変わらないその姿が「大丈夫だよ」と背中を押してくれているようで、今も助けられている。

去年の夏の終わり。就職試験を終えたばかりの次男が体調を崩した。猛勉強の末、無事に内定を得た直後、それまでの疲労が一気に押し寄せて、冬の国家試験に向けての勉強に集中できなくなっていた。残り少ない大学の授業もオンラインで受けられるからと、思いきって帰省してきた。

ゆっくり休み、美味しいご飯をいっぱい食べて、いつものドライブに出かけた。お気に入りの音楽を聴きながら、昔と変わらない景色に、疲れた心が癒やされたようだ。息子はだんだん元気を取り戻した。

人をたすけたい

この春から、末っ子の三男は高校3年生に、長男と次男はそろって社会人になる。

3人とも、これまで教会の行事にしっかり参加してきた。主人は息子たちが幼いころから、「人をたすけたい、人の役に立ちたいと一生懸命に取り組めば、神様がしっかり味方してくださるよ」と話してきた。その言葉を土台に、彼らは自分のやりたい勉強を見つけ、精いっぱい頑張ってきた。

長男は工学部でデザインを学び、医療従事者を助けるデザインの仕事を選んだ。次男は骨折してリハビリで助けてもらった経験から、作業療法士を目指して病院に就職する。

長男はいずれ主人の後を継ぎ、教会の会長になる予定だ。進路を心配した親戚が長男に尋ねた。教会に戻ってくることに不安はないのかと。

長男は、「はい。だって、お父さんとお母さんがいつも楽しそうだから」と、あっけらかんと答えたそうだ。教会長を務めながら、若いうちの経験を活かして地域で人だすけがしたいと、私たちにも話してくれた。

3人には、思う存分勉強して、若い感性で広い世界を見てほしい。都会の空の下、楽しいことばかりではないだろう。疲れきったときには、いつでも帰っておいで。美味しいご飯を作って待っているから。

そしてまた、ゆっくり諏訪湖をドライブしよう。


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