物を生かして使い、感謝の言葉でお別れを – わたしのクローバー
辻 治美(天理教甲京分教会長夫人)
1969年生まれ
母が用意してくれた筆箱
「気をつけてね、頑張って!」
大きなランドセルを背に登校する可愛い1年生の姿を見ると、思わず心の中で応援したくなります。そして、祈るようにわが子を見送った当時の記憶がよみがえります。
制服、文房具、上靴、体操服、ランドセルなど、お下がりを頂いたり、買いに行ったりして、あれこれ揃え名前を書き入れました。新品の鉛筆や消しゴムを筆箱に収めながら、母もきっと私のために準備してくれたんだろうなあと、母が用意してくれた筆箱を思い出しました。
少女漫画風のピンクの筆箱で気に入っていたのに、学校でお友達の筆箱を見て、なぜか恥ずかしくなりました。両面開きの筆箱の子が多く、片面の筆箱に不満を持ってしまい、雑に扱っていました。
ふたが壊れた筆箱を処分するとき、いざゴミ箱に入れるとなると、かわいそうでなかなか捨てられません。もっと大事に使えば良かったなあと、胸がチクッと痛みました。筆箱に「今までありがとう」と言って、ようやく気持ちに区切りがつき処分できました。
粗雑に扱って壊した後の心地の悪さと、物にも感謝の心を持つことを教えてくれた母の筆箱。その後も、使えなくなったものを処分するときは感謝の言葉でお別れし、子供が生まれてからは、子供たちと一緒に「今までありがとう」と言って、お別れするようになりました。
娘が大事に使った筆箱
娘が小学校卒業間際のある日のこと、「きょう先生が、1年生のときの筆箱を今も使ってる人いるかって、クラスで聞かはってん」と話しかけてきました。そして、「そしたら私一人だけやってん。先生もみんなもびっくりして、すごいなーって言ってくれてん」と、嬉しそうに話してくれました。
「ほんまに?あんた偉い子やなあ」と、思いきり褒めると、誇らしげな顔で心から喜んでいました。物を大切にした児童にスポットを当ててくれた先生も素晴らしいと、感謝の気持ちが湧きました。
私はすぐに筆箱を壊したけれど、「今までありがとう」と言って物とお別れしてきたおかげで、娘には物を大切にする心が育まれたのかなあ、とも思いました。
今の時代、一つの物を長く使うことが少なくなってきました。まだ使えるものでも、気に入らないから、新型にモデルチェンジしたからと、新しいものに替えてしまいます。
おやさま(天理教教祖・中山みき様)は、「物は大切にしなされや。生かして使いなされや。すべてが、神様からのお与えものやで」「すたりもの身につくで。いやしいのと違う」と言われました。
物を大切にするとは、溜め込むことではなく生かして使うことで、すたりもの(古くなり流行遅れになったもの)を大切に使うことは、自分の徳として身につくことを教えられたのでしょう。
徳とは魂の力、運命を切り開く目に見えない力だと聞いたことがあります。物があふれる今の時代。人生に必要な徳を身につけるためにも、物を大切にし、生かして使う喜びを味わいたいと思います。



