講演ダイジェスト 天理大おやさと研究所特別講座「教学と現代」から
人類みな兄弟姉妹の教えを心に
永尾教昭・おやさと研究所長
天理大学おやさと研究所(永尾教昭所長)は3月28日、特別講座「教学と現代」をオンライン開催した。今回のテーマは「新型コロナウイルス時代の天理教の教えと実践」。永尾所長の基調講演のほか、佐藤孝則研究員が生物科学的な視座かよしつぐら、澤井義次研究員が天理教学の立場から発題した。ここでは、「一れつきょうだいの教え天理大学の事例をもとに」と題する永尾所長の基調講演をダイジェストで紹介する。なお、文末のリンクから講座全体を視聴できる。
昨年夏、天理大ラグビー部で新型コロナウイルスの集団感染が発生した。検査、公表を進める中で一般メディアのニュースにも取り上げられ、一度目の記者会見を行った。
その後、天理大生がアルバイトを断られたり、教育実習の受け入れを拒否されたりするなどの「差別」が発生したこともあり、「学生を守ろう」と、あらためて記者会見を開いた。
その後もクレームは続いたが、市民や卒業生からの激励の電話が増え、教育実習生が全員受け入れられるようになるなど”潮目”が変わっていった。
そして、集団感染は収束。部員たちには、「不祥事ではないので卑屈になるな。しかし、心配をかけたことは事実だから、謙虚にはなろう」と言葉をかけた。
このたびの問題の背景には、コロナという未知なるものへの恐怖や心配があったのだと思う。心配するのは当然だが、その気持ちが大きくなると、当事者への差別につながっていくのではないだろうか。
その一方で、「私が受け入れ先の人ならば」と考えたとき、店の客や自分の家族、学校であれば、生徒やその保護者のことを第一に考えるだろうし、そうすべきだと思う。”万が一”の恐怖があるからだ。
だから私は、相手先を一方的に断罪するのではなく、事実を丁寧に説明し、一緒になってこの問題を考えていきたいと思い、記者会見を開いた。
“仕方がない”を改める
人は、差別や偏見は悪いことだと理解はしているが、実際にはなかなか無くならない。
私は、「教育の力」と「信仰の力」の二つが、それを解決する道筋へと導く大事なものだと感じている。
「信仰の力」とは、人間の知恵・力を超えたもの、私たちでいう「親神様」といった存在に対して畏敬の念を持つことだ。
差別や偏見はいけないことだと心の中で分かってはいても、「仕方がない」と心を整理してしまっている人は多い。しかし、親神様という人知を超えたものの存在を意識することで、「仕方がない」と整理された心を再度開き、その心を無くそうと努められるようになる。それが差別を無くしていく大きな一歩になるだろう。
“偉大な存在”を信じることなく、人間至上主義を振りかざす限り、差別は無くならないだろう。
一方で、お道には、人類はみな兄弟姉妹であるという教えがある。私たちがお互いを本当に”兄弟姉妹”だと思えたとき、それぞれに違いはあっても、拒絶ではなく違いを受け入れることができる世界になっていくはずである。
動画はこちらから(約1時間25分)