特別インタビュー – 修養科80周年に寄せて
おぢばで仲間と過ごす〝陽気ぐらしの3カ月〟
永尾洋夫 教養室長
昭和16(1941)年に開設された修養科は今年、80周年の節目を迎えた。世界各地から志願した老若男女の修養科生たちは、おぢばでの3カ月の生活を通じて、教えを学び、仲間と語り合い、伏せ込むことで、さまざまなご守護を頂いている。ここでは、修養科80周年に寄せて、永尾洋夫・教養室長にインタビューした。
―――修養科開設80周年を迎え、あらためて思うところをお聞かせください。
修養科は昭和16年、天理教校内に開設されました。以来80年にわたり、その目的を、人を育てるということに据えています。さまざまな変遷を経た中でも、陽気ぐらしができる人材を育成するという思いは常に変わりません。
伏せ込みがたすかりに
―――5年前、プログラムに大きな変更がありました。修養科生の反応はどうですか。
大きな変更点は、ねりあいやホームルームの時間の追加、みかぐらうたとおてふりの授業の連動、詰所教養掛との連携などです。なかでも、ねりあいの時間を設けたことに、多くの反響が寄せられています。
授業で学んだ教えを自分の中で咀嚼し、自らの心のありようを教えに照らし合わせていく。さらに同じクラスの人たちと同じ目線で語り合うことで、新たな気づきが得られているようです。
修養科生からも「自分と向き合うことができた」「さまざまな視点があって面白いと思った」などの感想を聞いています。
―――詰所での生活については、どのような反応がありますか。
詰所で生活を共にし、世話取りをされる教養掛や詰所勤務者の方々に対しては「教養掛研修会」を開催し、精神疾患や依存症などの専門知識を学んでもらっています。精神疾患などを抱える修養科生の環境づくりや、生活に適応しにくい部分へのサポートが目的です。
精神疾患の方にとって睡眠は非常に重要です。知識がなければ無理に起こしてしまうこともありますが、睡眠を十分に取ることができる環境を整えたところ、無事に3カ月の修養を了えることができたという事例があります。
―――コロナ禍になってからの修養科生の様子に変化はありますか。
昨年、新型コロナウイルスの感染拡大に伴い、仕事を失ったことから修養科を志願したという人が少なからずおられました。
さまざまな悩みを抱えた修養科生は、教えを学び、ぢばに伏せ込む中で、3カ月目に入ると心の内が変わってくる。ねりあいやホームルームでも、最後のほうに「私にできるおたすけ」「これから、どう通るか」を話し合います。そうする中で、修了後の生活についても前向きになり、再就職が決まった、仕事先が見つかったという人がおられます。そうした人たちは皆、「おぢばで伏せ込んだおかげ」と喜んでいました。
心の向きが変わる場所
―――修養科生が親里の各所で、おさづけを取り次いでいる姿をよく見かけます。
修養科志願者の中には、身体の身上の人が約30㌫、精神疾患や依存症などを抱えている人が約10㌫います。一方で、すでにおさづけの理を拝戴したようぼくも70〜80㌫いることから、修養生活中はおさづけを取り次ぐ、あるいは取り次がれる機会がたくさんあります。
私は始業式のあいさつで「おさづけの取り次ぎを心がけてほしい。ここには親神様・教祖が、いんねんあって皆さんをお引き寄せくださった。そのいんねんとは、陽気ぐらしをさせたいという元のいんねんだから、クラスの中で陽気ぐらしを実現してください」と伝えています。おさづけの取り次ぎによって不思議なたすけを目の当たりにすれば、親神様のご守護が感じられます。すると、当たり前の日常が当たり前ではなかったと、感謝の心が芽生えてくるのです。
―――修養科生がご守護を頂いたというエピソードをお聞かせください。
ある多発性硬化症の女性が、感話の中で、「毎日、たくさんの人がおさづけを取り次いでくださった。私も、一人でも多くの人に取り次がせていただこうという気持ちが自然と芽生えた。大きな身上を抱える人と出会い、励まし合う中で勇気をもらった。おかげで、明るく前向きな心に変わることができた。そんな中で、肝機能の数値が正常値近くまで下がっていた」と喜びを語っていました。
このように「人たすけたらわが身たすかる」姿が多く見られます。たすかりたいからたすけたいへと心が変化していく中で、ご守護を頂くのだと思います。
―――最後に修養科の志願を考えている人に、メッセージをお願いします。
修養科では、授業で教理を学び、おてふりや鳴物の修練、ひのきしんに励みます。修養生活を通じて教えの基本が心に治まれば、感謝の気持ちから、おつとめの態度が変わり、報恩の思いから、おさづけの取り次ぎに真剣になる。修養科は、心の向きが変わる場所だと思います。
また修養科は、ようぼくの心に一層の磨きをかける場所でもあります。教えを知って間もない人はもちろんですが、ようぼくや教人資格を有する人、また一度修了したという人にも、あらためて修養科を志願してほしい。コロナ禍の今だからこそ、志願できるという人もいるでしょう。
一人ひとりに与えられた成人の旬があると思います。神様によっておぢばに引き寄せられた仲間と共に、“陽気ぐらしの3カ月”を過ごしていただきたいものです。
(『みちのとも』6月号に詳報)