特別寄稿 – 村上和雄・筑波大学名誉教授を偲んで
科学の視点から教えを世界へ発信
今中孝信 天理よろづ相談所病院「憩の家」元副院長
親神様の存在とそのお働きを、生命科学の視点から世界へ発信し続けられた村上和雄先生が、去る4月13日に出直された。ここに、謹んで哀悼の意を表します。
村上先生の研究者としての業績はあまりにも偉大で、枚挙にいとまはないが、お道の信仰をもつ科学者として、世の人々に常に訴えかけられたのは次の点にあると思う。
人間をはじめとするすべての生物の設計図は基本的に同じで、遺伝子を構成する4種の文字(AGTC)で書かれていること。生命の起源をたどると1個の原始細胞に行き着き、そこから人間へと進化してきたこと。人間の遺伝子の働きは、心づかいによってそのスイッチがオンになること。人間の膨大な遺伝情報を極微の空間に書き込み、しかもそれを一刻の休みなく精緻に働かせている元なる親の存在を、「サムシング・グレート」(大いなる何ものか)という表現で一般の人々に分かりやすく伝えたこと―――。まさに、親神様のメッセンジャーとしての信念を貫かれた生涯であった。
たとえば、こんなトピックがある。1986年に先生の著作『人間 信仰 科学』(道友社刊)が世に出された。99年には『サムシング・グレート 大自然の見えざる力』と改題して別の出版社から刊行されると、一躍ベストセラーとなり、14カ国で翻訳出版された。このこと一つ取っても、世界中の多くの人々が元の親の存在を知り、元の親が教える、人間が幸せになる真の生き方(陽気ぐらし)にふれる一つのきっかけになったのではないか。
ところで昨年、私が連載していた『陽気』誌の拙文を読まれた村上先生が、ご自身が連載中の月刊誌『致知』での対談を提案された。今年の3月号で企画が実現し、先生と私はリモート対談を通じて「新型コロナはサムシング・グレートからの警鐘である」という認識を共有した。
また対談中、村上先生は「真の健康は単に病気がないというだけでは成り立たない」として、「たましい」の健康にも目を向けるべきと指摘された。そして「たましい」は個人レベルを超えて世界の人々とつながっており、その元であるサムシング・グレートともつながっている。そうであるならば、「たましい」の健康を保つには、サムシング・グレートときちんとつながっていなければならない、と述べられた。
ようぼく医師である私も同意見で、これを踏まえ「大いなる存在に生かされ命を育んでいるという自覚を取り戻し、生き方を見つめ直すことが、ウイルスを終息させる一番の早道なのでは」との見解を示した。
そして、村上先生の遺稿となった『致知』6月号の記事では、「人間の究極の願いは幸せになること」と題して、あらためて人生における「たましい」の健康の大切さを訴えられた。
私はこれを、先生からのメッセージと受けとめている。人間は親神様によって生かされているという真実と、人間が幸せになる真の生き方を、科学の視点から世の人々に説き続けられた村上和雄先生のご遺志を、ようぼく医師として引き継いでいきたいと思う。