すきっと Vol.36 – 各界著名人の“味”を引き出す
特集 – humanity 人間味
6月1日発売
定価660円[本体600円]
「すきっとした気分で暮らすために」をコンセプトに、さまざまなジャンルの第一線で活躍する人たちの生きざまを紹介するインタビュームック『すきっと』第36号が6月1日発売された。新型コロナウイルス感染拡大の影響で昨年12月の刊行予定を延期し、1年ぶりの発刊となった今号の特集テーマは「humanity――人間味」。俳優の梅沢富美男さんや真矢ミキさん、シンガーソングライターのイルカさんが、その半生を振り返りつつ、仕事に懸ける思いや自身の信念を余すところなく語っている。ここでは、特集の中から“光ることば”をピックアップするとともに、『サライ』(小学館)の編集長などを務めた岩本敏氏に本誌の書評を綴ってもらった。
役者という「語り部」として日本人の心を未来へ伝える
梅沢富美男 俳優
本格的に役者になろうと思ったのは14歳のころで、それから56年間、演劇に携わってきました。親父の時代の芝居は、人間のあり方や義理人情、上下の隔てといった道徳観が、セリフから感じられることが多くありました。思えば、どこか俳句の感性にも通じるものがあったように思います。
バラエティー番組『プレバト!!』がきっかけで、初めて俳句を知りました。いろいろな人の俳句にも触れるなかで、ふと「これは親父の時代のお芝居だ」と感じました。親父の時代の芝居は、多くのセリフが七五調なんですよ。やはりこのリズムは、日本人の耳にすっと入ってくる。
最近は若い人でも俳句を作る人が増えて、『プレバト!!』の視聴率も上がっています。僕はそれはきっと、俳句や演歌を理解する“言葉の根っこ”が日本人にはあるからじゃないかと思います。
「悩んでいる暇があったら進め」好奇心と図々しさが紡ぐ新しい日々
真矢ミキ 俳優
宝塚には20年間在籍していました。多感な時期だったので、自分のなかでのテーマも三回くらい変わった気がします。
初めのころは、とにかく自信をつけたい一心でした。私はもともと受け身のタイプなんです。いまのイメージから信じられないかもしれないけど、発言するのがすごく苦手で、自分の思いを通さずに生きてきました。
次の段階が二十代の半ばくらい。トップスターの座が見え始めたころからは本当に試行錯誤の連続で、調子に乗って「自分はきっと大丈夫じゃないか」と、余計な自信を持ってしまったこともありました。
その後、「何か人の役に立ちたい」という思いが湧いてきたのは、トップスターになる少し前くらいからです。志と言ったらおこがましいですけど、「私を見て、一人の人でも心が晴れやかになったり、笑顔になっていただけたら、それでいい。それが納得のいく人生なんだ」と思うようになったんです。その思いは、いまも変わりません。
歌、旋律、つながる心……目に見えないものが元気をくれる
イルカ シンガーソングライター
新型コロナウイルスの感染拡大には、いろんなことを考えさせられます。コロナは怖いですが、人々の心が攻撃的になったり、人を疑うようになったりすることのほうが怖いですよね。こんなときこそ、音楽など芸術の力を発揮できればと思っています。
世界で起こる異常気象や自然災害、それに今回のコロナも、何か目に見えない大自然のようなものによる人間への教育なんじゃないかと思うんです。それは“親心”でもあります。親が子供に何かを教える際、ときに温かく、ときに厳しくしますよね。そういう親心が、私たちに向けられていると感じています。
コロナで活動自粛になって不満を持つだけでは、もったいないですよね。きっと何か教えられているんです。投げかけられているものをしっかり受け止めて学んでいくことで、向かい風のなかでも一歩前へ進めるようにしたいですね。
この人に訊く – この人に会いたい この人に訊きたい
「縄文×弥生」が生み出す日本美術の潜在力
山下裕二 美術史家
日本美術は、「縄文」と「弥生」という二大類型に当てはめることができます。「縄文の造形」は、火焔型土器に代表される、装飾的でエネルギッシュなものです。一方、「弥生の造形」は、調和のとれた美しいフォルムに抑制のきいた文様が施され、機能的で無駄がない。日本に美術史が確立した明治時代以降、後者が「日本的美」の特質であるとされ、縄文土器や土偶は、美の対象ではないと切り捨てられてきました。
日本の文化は、弥生時代以降、ユーラシア大陸から流入する文物を取り込みながら、独自の発展を遂げてきました。そして、弥生的な美が「日本的美」の主流となりました。しかし、弥生の地層の真下には、縄文の豊かな伏流水が流れていて、ときどき間欠泉のように吹き出してくる。それが伊藤若冲のような規格外の絵師だと思うのです。
日本の美術には、縄文的なるものと、弥生的なるものの両面があり、そのハイブリッドであるから、豊かなものになっているのです。
特別寄稿 雑誌としての「すきっと」評
バックナンバーを読みたくなる魅力
岩本敏 フリー編集者
【いわもと・さとし】
1947年、岡山県生まれ。小学館で40年にわたり雑誌編集に携わる。『BE‐PAL』『サライ』『ラピタ』等の編集長を務めた後、同社執行役員、同社電子出版担当社長室顧問、ネットアドバンス社取締役を歴任した。オフィスらくだ代表。
長年、雑誌編集に携わった私は、「雑誌というのは、興味のなかった事物や人に出会う機会を提供するメディア」だということにこだわってきた。それが、テレビ、インターネットなどのメディアと異なる、雑誌特有の魅力だと、今も思っている。
雑誌を手に取るきっかけは、一つか二つの興味ある記事に惹かれてだと思うが、実際に読んでみると、自分が興味を持っていた記事以外に、おもしろい情報を見つけたり、それまで関心のなかった新しい視点や分野に出会ったりすることが少なくない。それは、視野と知的生活の幅を広げる機会となる。
『すきっと』には、ストレスを感じさせない記事内容とその見せ方の絶妙なバランスを感じる。想定読者層が熟年層ならば、より心身ともにストレスフリーであることが大切だ。手に持って読んでいて重さを感じさせず、大きめの文字で読みやすいといった身体に優しい作りと、心を豊かにする記事を中心にした、精神的にストレスを感じさせない内容であることが嬉しい。
また、巻頭のインタビュー特集以外に、より心惹かれる記事も多い。それは、かつて私が雑誌を編集するうえで重要視していたことでもあり、雑誌を読む悦びを思い出させてくれた。
雑誌の情報に速度は期待されていない。人の生きる力や、心豊かに生活する知恵など、雑誌が提供できる不変の情報こそが求められている。そういう意味では、『すきっと』は、バックナンバーを読みたくなる魅力を備えている、と言えるのではないだろうか。
『すきっと』のバックナンバーは下記のURLから、ご購入いただけます。
https://www.tenrikyo.or.jp/yoboku/skitto/
コマーシャル動画公開中
『すきっと』36号のコマーシャル動画を道友社YouTubeチャンネルで公開中。下記のURLから、ご覧いただけます。
https://doyusha.jp/jiho-plus/redirect/redirect-229/