『新善本叢書』完結 – 天理図書館
原本の色彩 忠実に再現
研究者ら幅広く活用
天理図書館(東井光則館長)は今年2月、平成27年に始めた『新天理図書館善本叢書』(全5期36巻)の事業を完結した。高精細フルカラー版の『新善本叢書』は、研究者の間で、国宝や重要文化財などの原本に限りなく忠実な資料と位置づけられ、高い評価を得ている。
天理図書館は、資料の収集を通して、道を広め、世界文化に貢献することを目指して、中山正善・二代真柱様が大正14年に創設。その後、二代真柱様のご遺志が今日まで連綿と受け継がれ、さまざまな複製事業が行われてきた。
その取り組みの一つである『善本叢書』は、貴重な史料のさらなる「活用」と、原本を後世に残す「保存」を目的として製作され、昭和46年から15年間にわたって80巻刊行。国宝、重文を含む和書、漢籍など多種多様な史料が収録され、研究者や愛書家たちに幅広く活用されてきた。
「保存」「利用」の両立を図る
こうしたなか、原本と遜色のないフルカラー版の需要の高まりを受けて、『善本叢書』を増補改訂したフルカラー版『新善本叢書』の製作を開始。この『新善本叢書』の印刷には、高度な図版印刷技術を有する天理時報社が携わり、平成27年から順次刊行。今年2月に全5期36巻をもって完結した。
収録史料は、諸国風土記の伝本で最も古い写本の『播磨国風土記』(国宝)、漢和辞書『類聚名義抄』(国宝)といった第一級の重要史料など、各分野の最も重要な伝本が選ばれた。
このほか、武士や貴族、庶民の暮らしなどを細密かつ華麗に描いた『奈良絵本』(室町時代後半〜江戸時代前半に製作された絵入りの本)など、高精細のフルカラー印刷が不可欠な史料などが多数収録された。
岡嶌偉久子・同館司書は「史料は収蔵庫から出して直接触るたびに傷むため、原本を直接手元に置いて分析する機会が極めて少ない。原本に忠実な複製本を作成することで、手軽に分析することができる。また、原本を開く機会も減るため、『保存』『活用』の両立を図るうえでも、大変意義のある事業となった」と、その重要性を説明している。