ドキュメント「ようぼくの実動日」- 全教一斉にをいがけデー
「この人に教えを伝えたい」“いまできる”にをいがけを
信仰の喜びを胸に
「にをいがけデー」二日目の9月29日午前。島根県安来市内は、未明から降り続いた雨が上がり、秋らしい日和となった。高木浩さん(74歳・能義分教会ようぼく)とみね子さん(70歳・同教人)夫妻は、JR安来駅前の交差点で路傍講演を行った。
15年前、長男・修さんを亡くした夫妻。心を倒しそうになったが、教友に支えられながら教えを求める中で、後ろ向きだった心が次第に前向きになっていった。
やがて、「少しでも多くの人に教えを知ってもらいたい」と、教友有志のにをいがけ活動に参加するようになった。
「にをいがけデー」当日は、布教部が制作した「身体はかりもの」のフリップを手に、信仰のありがたさについて道行く人に語りかけた。
浩さんは「コロナ禍で思うように活動できない中ではあるが、これからも夫婦でにをいがけに励みたい」と話した。
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「久しぶりに戸別訪問に回ることができて、本当にありがたい気持ちでいっぱい。当たり前のことができない今だからこそ、私にできることを見つけていきたい」
そう話すのは、井口加保理さん(59歳・丹山分教会教人・山梨県昭和町)。コロナ禍の影響で社会に閉塞感が漂うなか、「自分にできることはないか」と考え、周囲の人や職場の同僚たちが少しでも喜びを見いだせるようにと、折を見て声をかけてきた。
こうしたなか、「にをいがけデー」では、富士川支部(築地光生支部長)の仲間と共に戸別訪問をした。
ある訪問先では、2階のベランダで洗濯物を干している女性に声をかけた。「こんにちは。ポスティングをさせてもらっていいですか」。周囲に話しかけるときと同じように、笑顔で声をかけた井口さん。許可を得ると、リーフレットをポストに投函した。
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同じ日の午後、神戸市のJR垂水駅前で路傍講演に立つ森谷彰宏さん(31歳・天浦分教会教人)は、自らの信仰体験を熱っぽく語っていた。
小学生のころ、筋力が徐々に低下する難病「筋ジストロフィー」の疑いがあると診断された。時折、呼吸困難に陥るほど症状が悪化することもあったが、母・伸子さん(64歳・同)から毎日おさづけの取り次ぎを受ける中で奇跡的に回復していった。
伸子さんから「神様にたすけていただいたのだから、今度は人さまをたすけさせていただこう」と促された。森谷さんは、専修科、大教会青年を経て現在、自教会で青年としてつとめている。時間を見つけては路傍講演に立つなか、多くの人たちと出会い、おたすけをしてきた。
「路傍講演を続ける中で、信仰の元一日をあらためて思い返し、ご恩報じの大切さを実感している。今後も報恩感謝の心で、にをいがけ・おたすけに努めたい」ときっぱり。
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翌30日、長野県小諸市のJR小諸駅周辺では、島川ヒロ子さん(71歳・本愛岳分教会岳島布教所長)が、教友と共に神名を流していた。
5年前の「にをいがけデー」以来、毎月3回、教友と共に実動するようになった。コロナ下でも、マスクを着用するなどの感染防止対策を講じながら、互いに励まし合って続けているという。
島川さんは「今年も健康な体をご守護いただいて、『にをいがけデー』当日に神名流しをすることができた。本当にありがたい」と笑顔を見せる。
手紙やSNSを活用
一方、コロナ禍で活動が制限されるなか、“身近な人へのにをいがけ”を意識し、実践する教友も少なくない。
東京都大田区の水元公一さん(55歳・豪峰分教会ようぼく)も、その一人。筆まめな水元さんは、数年前ににをいがけを通じて知り合ったAさんに、一通の手紙をしたためた。最近、疎遠となり、会う機会も連絡を取る機会も減る中で、「お道につながってほしい」という思いを込めて綴った。
水元さんは「“身近な人へのにをいがけ”を意識して手紙を書いたことで、『Aさんに教えを伝えたい』という自身の気持ちが固まったように思う。これから休日を利用し、できればお会いして、教えを伝えたい」と。
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天理市在住の尾種栄春さん(50歳・手柄山分教会教人)は、お道のエッセンスを分かりやすく伝える四コマ漫画を制作し、日ごろから自身のSNSにアップしている。
また、4カ月前からはコロナ禍で不安を抱える未信仰の人向けに、新たに十二コマの漫画も投稿するようになった。
こうしたなか、「にをいがけデー」に合わせて「たんのう」や「八つのほこり」などの教えをテーマにした十二コマ漫画の総集編をネットに上げた。
尾種さんは「自分にできるにをいがけの形として、これからもお道の教えを分かりやすく理解できるコンテンツを発信していきたい」と話す。
教区独自の取り組みも
現下での新たな形の「にをいがけデー」の実施に当たり、独自の取り組みを推し進める教区もあった。
宮城教区(加藤元一郎教区長)は、「TO YOU(あの人へ)プロジェクト」と銘打った取り組みを推進した。
この取り組みは、いまだ信仰に至っていない家族や近親者、普段から付き合いのある隣近所の人、職場の同僚や友人、知人の中で「この人になら、お道の教えを伝えられる、伝えたい」という人に働きかけることを目的としている。その内容は、まず教区内のようぼく・信者が、事前に配布された「私のにをいがけカード」に相手の名前や伝える内容を記し、所属教会や地域の教会に届ける。各教会では、「ようぼくの実動日」である3日間、お願いづとめが勤められる。一方、ようぼく・信者は、「カード」に記した内容のにをいがけに取り組むというもの。
会社員の佐藤陽子さん(56歳・向山分教会ようぼく・仙台市)は、「にをいがけデー」に合わせ、妹夫婦に宛てて手紙を書くことを決め、その旨を「カード」に記した。
佐藤さんの妹・広江さん(50歳・同信者)は、未信仰の男性との結婚を機に教会から足が遠のいていた。こうしたなか、半年前のある日、広江さんから義弟が精神的な身上を患い、入退院を繰り返していると告げられた。佐藤さんは当時、お道から離れつつあった妹夫婦のことが気がかりだったものの、二人に寄り添うことができていない自身を省みたという。
「にをいがけデー」の教区の取り組みを知った佐藤さんは、少しでも妹夫婦に成人してもらいたいとの願いを込めて、手紙に自身の思いをしたためた。
佐藤さんは「妹夫婦をお道につなぐためにも、まずは私自身が、日々の生活の中で信仰実践を意識していきたい」と話した。
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道友社は、「にをいがけデー」の特別企画として「身近な人に本を贈ろう」キャンペーンを実施した。これは、コロナ禍のなか、なかなか会うことができない身近な人へお道の書籍を贈り、にをいがけの一助としてもらうもの。
徳島県勝浦町の今津善野さん(75歳・生比奈分教会ようぼく)は、本紙広告でキャンペーンを知り、『たんていまーしー ぽかぽかおひさまのひみつ』を購入。未信仰の息子の妻へ贈り、「孫に読み聞かせて」と伝えた。
今津さんは「これからも、お道の本や『天理時報』を活用して身近な人に信仰の素晴らしさを伝えていきたい」と語った。