おやのことば・おやのこころ(2021年10月27日号)
小さいのを楽しんでくれ。末で大きい芽が吹くで。
『稿本天理教教祖伝逸話篇』142「狭いのが楽しみ」

空気が澄み、夕焼けが綺麗な季節になりました。茜色に染まる空の下、涼しい風に吹かれていると、このまま秋の気配に浸っていたい気分になります。
四季の移ろいに身を寄せると、不思議と心が浮き立ちます。今朝、庭木の赤い実をついばむ小鳥の姿を目にしたとき、自分だけの“小さい秋”を見つけたようで、うれしい気持ちになりました。
小さい秋は、そこかしこに広がっています。ハゼの葉が色づき始め、たわわに実った柿の木は柔らかな光に照らされて輝いています。毎年お馴染みの眺めかもしれませんが、旬の風情を楽しんでいると、おのずと喜びがあふれてきて、明日はどんな秋に出合えるだろうかと胸が弾みます。
これと同じことが、普段のささいな出来事にも言えるかもしれません。朝起きて家族とあいさつを交わす。会話しながら食事を取る。子供をお風呂に入れ、髪の毛を乾かしてやる……。毎日変わらない光景ですが、その当たり前の日常に感謝し、どんなときも与えを楽しむ心で通っていれば、きっと親神様が喜びの種をいくつも芽吹かせてくださると思うのです。そう考えると、明日という一日が、より一層楽しみになってきます。
わが家へ帰ると、台所から香ばしい匂いが漂ってきました。今日の夕食はサンマの塩焼きです。味覚の秋に感謝して、家族で楽しく食卓を囲みたいと思います。
(お)