虫歯は早めに – Well being 日々の暮らしを彩る 13
2025・12/17号を見る
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歯医者へはつい足が遠のいてしまう。半年に一回は通ってクリーニングと検査をするのがいいとされるが、時期が来ても「まあ、そのうち」。日頃しっかりケアしていれば、虫歯にはそうそうなるまいと、希望的な観測のもと、せっせと歯みがきに励んでいた。
やがて右上の奥歯が、ふとした折にしみるように。みがきすぎか、それとも単に気のせいか。しだいに「ふとした折」でなく常にしみるようになり、ついに歯医者に電話した。
受付で問診票に記入する。備考欄には「痛みに恐怖心があります。削るときは麻酔をお願いします」と書いた。これはやや正確でなく、例えば予防注射や採血の針を刺すときの痛みはまったく平気。「そんなに深く刺さない、そんなに長く続かない」とわかっている。歯の治療はどこまで掘り進むかわからないのが怖いのだ。
診察椅子へ案内される。「しばらく間が空きましたね」と先生。カルテによれば三年ぶりだそうだ。われながら驚く。半年に一回の通院をそんなにスルーしていたとは。「お恥ずかしいです」。緊張でただでさえ縮こまっている身をますます小さくした。
レントゲンを撮ると、残念ながら虫歯である。「歯ブラシでこすりすぎです」「知覚過敏でしみるだけでしょう」で削らないですむことを、ひそかに期待したけれど、その可能性はあえなく消えた。結構深いところまで蝕まれているそうだ。「くれぐれも麻酔を」と念押しする。
麻酔液が歯ぐきに入ってから間をおかず機械の音が。こんなに早く削り始めてだいじょうぶか、麻酔がまだ充分効いていないのでは、とひるむ。
そこからはまるで口の中で道路工事でもしているような騒々しさだった。キュイーン、ガガガガ、何種類もの掘削音が代わる代わる、一段落するかと思えばまた別方向から。痛みこそないものの、ただならぬ振動と圧がかかり続ける。
始めるのが早すぎないか心配だったのが、終わらないうちに麻酔の切れる方が心配になってきた。少しでもスムーズに進められるよう、めいっぱい口を開けているのみ。
終わっても口がすぐには閉まらず、頬のしわもしばらく伸びず、鏡に映った自分が五歳くらい老けたようだった。削った穴を仮埋めし、次回に詰め物をする予定。
受付では支払いを済ませた人が半年後の予約を入れていた。えらい。「そのうち」では先延ばしになるとよく知っている。
虫歯も早期発見、早期治療に限る。浅いうちに来ていれば大ごとにならずにすんだ。次回必ず半年後の予約をして帰ろう。












