WBCがつなぐ世界の欠片 – 視点
2026・3/18号を見る
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今年1月3日未明、米軍によるベネズエラへの電撃的な軍事侵攻は、麻薬テロの容疑をかけられたマドゥロ大統領夫妻を、わずか2時間半で拘束・連行した。
さらに2月28日、核交渉の決裂を宣言したトランプ政権はイスラエル軍と共同でイランへの大規模空爆を敢行。最高指導者ハメネイ師の死亡を経て、3月5日には米中央軍がイラン全土の制空権掌握を発表した。
これらトランプ政権の行動の是非や善悪の判断は、立場によって異なるが、「力による現状変更」であるとの批判を免れない。国際社会の分断は、急激に深まっている。
その一方で、現在開催されているWBC(ワールド・ベースボール・クラシック)は、こうした政治的亀裂とは真逆のエネルギーを放っている。米国、ベネズエラ、イスラエルといった地政学的緊張のさなかにある当事国たちが、同じルールのもとでフェアプレーを貫き、互いを尊重し合う姿は、政治の壁を超越した感動を世界に与えている。
このスポーツマンシップの価値が再評価される背景には、大谷翔平選手をはじめとする日本人選手の振る舞いも小さくない影響を与えているはずだ。大谷選手がグラウンドに落ちているごみを「他人が捨てた運」として拾い上げ、対戦相手への敬意を欠かさない姿は、単なるマナーを超えた道徳的な光を放つ。それは、敵味方に分かれて争う現代社会において、忘失されかけた「他者への慈しみ」の具現化にほかならない。
せかいぢういちれつわみなきよたいや たにんとゆうわさらにないぞや
おふでさき 十三号43、44、49
このもとをしりたるものハないのでな それが月日のざねんばかりや
これさいかたしかにしよちしたならば むほんのねへわきれてしまうに
武力による「平和」の危うさが露呈するいま、スポーツが分断をつなぎ止める懸け橋となることを願わずにはいられない。侍ジャパンの戦いを応援しながら、その先にある「一れつきょうだい」の教えを深く噛み締めたい。
(田邊)









