天理時報2022年8月3日号6面
【原初に「情」があった – 成人へのビジョン5】感情ではなく理性に基づいて合理的に行動する人を、合理主義者といいます。無駄を排して効率を求める姿は有能に映りますが、一方で冷たい印象を与えることも。感情を持つ人間は、多かれ少なかれ不合理な存在で、すべてを合理的に処理しようとすると、どこかで無理が生じるようです。お道では、神様が定めたこの世の摂理を「理」と表現します。信仰者は理に即した生き方を心がけ、そのため教理を深く学ぶことが求められます。ところが、時に私たちは、自分の解釈による“教理”を定規のように自身や他者にあてて、その是非を判断することがあります。天理に即して生きようとする姿勢は、教理に照らして物事を見る目を養いますが、その際、自身や他者の心を顧みないのであれば、その眼差しは冷徹なものになるでしょう。イラスト・かにたづこ1953年、人類史上、最も重要な科学論文の一つが発表されました。わずか2ページのこの論文は、その後の生命科学を決定づけます。DNAの二重螺旋構造の解明。この二重螺旋により、片方が欠損しても、もう一方のデータで欠損部が復元されるのです。いわゆる“生命の設計図”、DNAの驚くべき神秘です。僕は思う。原初、親神が世界の混沌たるさまを味気なく思召し、人間の陽気ぐらしをするのを見て共に楽しもうと思いつかれた。それは、私たちが言うところの「情」の働きではないか。元の親が思われた味気ないという心情、陽気ぐらしを見たいという情動、その「情」が、陽気ぐらしという壮大な構想のもと、親神の働きの道筋となってこの宇宙を覆った。それが「理」ではないか。神がこの世界を創めた思いは、まず原初の親心にあり、それは合理性の彼方にある、と。親の情に基づく世界の基本設計を天の理とするならば、理と情はDNAの二重螺旋のように不可分の対、二つで一つなのかもしれません。世界は理と情で編まれている。そんな夢想を僕は生きています。可児義孝, 【フードパントリーの取り組みを通じて – 読者のひろば】川上元教(37歳・兵庫県豊岡市)昨年末から月に一度、生活に困窮する人に無償で食料を提供する「フードパントリー」を所属教会で実施している。教会長後継者として、教会の現状を踏まえたうえで、地域で困っている人への支援について模索していたところ、準備などの負担が比較的軽く、誰でも気軽に利用できる支援としてフードパントリーの活動を知った。その後、会長の了承を得て、教会を拠点にフードパントリーを始めることになった。当初はノウハウがなかったので、食の支援を続けている地域の教友や、市の社会福祉協議会(=社協)のサポートを仰いだほか、フードパントリーの開催日を社協の広報誌で紹介してもらった。こうして昨年12月から活動開始。現在は月に一度、50人ほどが利用するようになった。フードパントリーを続けるうち、教会につながる信者さんたちも、おたすけの心で食料を寄付してくださるようになった。教会につながる皆さんが協力して活動を続けるなか、いま、身近にたすけを求める人が意外に多いことを、あらためて実感している。今後も自分にできる取り組みを続け、地域で困っている人たちに寄り添っていきたい。, 【世界大学クライミングでV – 天理大 西田秀聖選手】天理大学の西田秀聖選手(2年・下里分教会ようぼく)は、先ごろオーストリア・インスブルックで行われた「FISU世界大学スポーツクライミング選手権2022」に出場し、リード男子の部で金メダルを獲得した。スポーツクライミングは、ホールドと呼ばれる突起物に手や足をかけて人工壁を登る競技。ルートで何通り登れたかを競う「ボルダリング」、登った壁の高さを競う「リード」、登りきる速さを競う「スピード」の3種目がある。小学3年のときスポーツクライミングを始めた西田選手。以来、世界一を目標にトレーニングを続けてきた。リード種目を得意とし、天理高校時代には「IFSCクライミング・ワールドカップブリアンソン」や「リードジャパンカップ」で優勝するなど、国内外のシニアの大会でタイトルを獲得してきた。現在、スポーツの指導法を習得するため天理大学体育学部で学びながら、週に4日、奈良と大阪のクライミングジムで汗を流している。「『スポーツコンディショニング論』の授業がきっかけで、シーズン中とオフシーズンそれぞれのトレーニング方法を大きく見直した」と話す。今大会、日本からはスポーツクライミングの3種目において一定の選考基準を満たした大学生の男女17人が出場した。リード男子に出場した西田選手は、予選から上位をキープするものの、準決勝では3位通過。「勝てるとは思っていなかった」と振り返るが、決勝では序盤から着実に高度を上げ、完登へあとわずかという所まで迫り、大学生の世界一に輝いた。西田選手は「けがもあって、十分な練習ができなかったので、大きな大会で優勝できたことに正直言って驚いた。時間が経つにつれて実感が湧いてきて、今は喜びいっぱい。スポーツクライミングは自分との勝負であり、これまでのトレーニングでどれくらい世界に通用するのか、自分が今どの立ち位置にいるのかを知ったことが、この大会で得た最も大きな財産だと思う。スポーツクライミングは、完登できたときの達成感はもちろんだが、戦略を考えている時間も楽しいので、多くの人に興味を持ってもらえたらうれしい」と話している。