天理時報2022年7月20日号8面
【第19話 言葉はもっと豊かなもの – ふたり】やはり問題は、さとしのところだった。母親は夫から少しでも離れようと思い、自分で仕事を見つけてきた。それに腹を立てた夫は、いつになくひどい暴力を振るった。身の危険を感じた彼女は息子を連れて逃げ出した。行く当てがないのでカンのところへやって来た。居どころは知られていないはずだった。「すいません。ご迷惑をおかけして」母親は動揺していた。さとしは石のように固くなっている。まるで母親の恐怖を、すっかり吸収してしまったみたいだ。ハハが詳しく話を聞くことになった。子どもの耳には入れたくないので、カンはさとしを別の部屋に連れていった。かつての子ども部屋を、いまはカンがもっぱら寝室として使っている。さすがにベッドは大人用に入れ替えてあるが、部屋の様子はほとんど変わっていない。あの懐かしい日々、わたしはカンの傍らで眠ったものだ。さとしはベッドのなかで目を開けたまま、じっと天井を見ていた。カンは静かに語りはじめた。自分が子どもだったころのこと。物にぶつかってばかりいたことや、未来が見えたこと。見えなくてもいいものまで見えてしまったこと。ノートに書いた文字や数字が、鏡に映したように左右が反対になったこと。算数が苦手で、足し算のやり方がわからなかったこと。でも悪いことばかりではなかった。光や風や草花や小さな虫や動物たちの言葉が理解できたから。自然はみんな自分たちの言葉をもっている。こちらが喋らないと向こうも安心するのか、いろんなことを話しかけてくれる。人にも虫にも動物にも共通する言葉があるのに、どうして人間にしか通じない言葉を使うのだろう? 日本語も英語も、虫や小鳥には通じない。日本語は日本人にしか通じないし、英語も一部の国の人にしか通じない。言葉はもっと豊かなものであるはずなのに。夢を見ているみたいだった。人も虫も動物も植物も同じ言葉を喋り、過去と未来と現在は一つに融け合っている。そんな夢がいつも寄り添い、包んでくれていた。学校はまた別の世界だ。正しい言葉があり、多くのものに正解がある。昨日と今日と明日は切り離されている。二つの世界を行ったり来たりしていた。いまでもあるような気がする。行こうと思えば、いつでも行ける気がする。でも、いまはここにいる。ここが自分の居場所だから。少年はベッドのなかでじっと話を聞いている。何かが伝わっているみたいだった。かつてわたしがカンを見守ったように、いまはあの子が少年を見守っている。だからわたしはいまも、自分がカンを生きているような気がする。, 【レスリング管内指導者2氏 全日本選抜大会上位入賞 – 教校学園高OB 田中真男選手 天理大OB 福井裕士選手】天理教校学園高校レスリング部OBで同部コーチを務める田中真男選手(24歳・湯浅分教会ようぼく=写真左)と、天理大学レスリング部OBで同部コーチの福井裕士選手(33歳・樽水分教会愛知川布教所ようぼく=同右)は、先ごろ「明治杯全日本選抜レスリング選手権大会」に出場。田中選手が男子グレコローマンスタイル82キロ級で準優勝、福井選手が男子フリースタイル125キロ級で3位入賞を果たした。◇田中選手は、教校学園高からレスリングの名門・日本体育大学へ進学。卒業後は教会本部営繕部に勤務し、おぢばに伏せ込みながら教校学園高レスリング部のコーチとして後輩を指導している。その傍ら、現役選手としても練習に励み、「『天皇杯』令和3年度全日本レスリング選手権大会」では、男子グレコローマンスタイル82キロ級で準優勝した。その後も限られた時間の中でウエートトレーニングを重ねるとともに、グラウンド(寝技)の完成度を高めようと実戦練習を繰り返した。全日本選抜大会では優勝を目標に掲げた田中選手。初戦、準決勝を8‐0のテクニカルフォール勝ちで決勝へ進んだ。決勝の相手は、天皇杯で0‐8と完敗を喫した岡嶋勇也選手(警視庁所属)。前半で0‐6と大きくリードを許したものの、後半は田中選手が4ポイントを連取。しかし追い上げも届かず、4‐6で準優勝となった。田中選手は「決勝の後半は自分の形で攻めることができて、前回の対戦よりも手応えを感じた。年末の天皇杯から、再来年に開催されるパリ五輪の選考会がスタートする。厳しい戦いになると思うが、頑張って勝ち残りたい」と話している。◇一方、昨年の全日本選抜大会で準優勝した福井選手。年末の天皇杯後には、タックル主体のスタイルから、組手主体のスタイルへと戦い方を変えた。これは、レスリング強豪国・イランの選手が組手主体で結果を残していることから、「自ら実践し、その有用性を学び、後輩たちが強い選手と戦える道筋をつくりたい」との思いで始めたもの。また今春から、ストレングスコーチ(アスリートの体づくりの指導者)として、大阪経済大学ラグビー部や報徳学園高校柔道部で指導を始めたほか、国士舘大学レスリング部でも指導を兼ねた出稽古を毎月行い、強豪選手を相手に組手の研究を続けている。今大会では、準決勝を1‐3で敗北。その後、3・5位決定戦を3‐0で勝利し、3位決定戦では押し出しや足技を駆使して10‐0のテクニカルフォール勝ちを収め、3位入賞した。7月中旬、4年ぶりに全日本合宿に参加した福井選手。「年齢を重ね、同期や後輩が現役選手を引退していくなか、表彰台に立てたことがとてもありがたく、楽しく試合ができた。年末の天皇杯では、パリ五輪を目指す若者に交じって、いまの自分がどこまで戦えるのか挑戦したい」と語った。, 【全日本学生団体戦3位入賞 – 天理大柔道部男子】天理大学柔道部男子は、6月下旬に東京・日本武道館で開催された「全日本学生柔道優勝大会」に出場し、3位入賞を果たした。