天理時報2022年8月24日号6面
【千年後の言葉は – よろずの美の葉】小説を書いていると、しばしば言葉に翻弄される。たとえば「憮然とした」との言葉は、近年では不満な様子を示す表現として用いられる例が多い。「彼は憮然と舌打ちをした」などといった具合だ。だが一例として、戦前に活躍した作家・中島敦の短編『李陵』を見てみよう。この作の舞台は古代中国。主人公は前漢の将軍・李陵。匈奴と戦い、捕虜となった彼は、本国では寝返りを働いたと勘違いされ、留守宅の家族を皇帝により皆殺しにされてしまう。「長安に残してきた――そして結局母や祖母とともに殺されてしまった――子供の俤をふと思いうかべて李陵は我しらず憮然とするのであった」この憮然にはどう見ても、立腹の意味はない。実は憮然とは本来、さま「失望してぼんやりした様」を指す言葉。だが近年、「腹を立てた様子」という意味が一般化し、かつての意味を凌ぎつつあるのだ。この新しい意味を誤用と断じるのはたやすい。ただ日本語とは現在でも日々新たな言葉が誕生する生きた言語であり、古くからの言葉も日々変化をしている。ゆえにこの意味はどちらも正しいと考えるべきだが、小説家としては読者が「憮然」の語をどちらの意味で読むか分からない。従ってなるべくこの言葉は使わないでおこう、と逃げを打つことになってしまう。一方で面白いのは、近代以降の造語と勘違いされがちな語が案外古くから使われている例。たとえば「天気」は、平安時代にはすでに現代と同じ意味で使われている。また「むかつく」と言えば、我々は現代の若者語だと考えるが、これまた平安時代末期に編纂された『色葉字類抄』には、胸がもやもやしたり吐き気がする状態の表現として「ムカツク」との語が登場する。腹が立つとの意味に変化するのはどうやら江戸時代初期らしいが、それでも酒を飲み過ぎた翌日、平安貴族が「むかつく」と言っていたかもしれないとは、なかなか楽しいではないか。もっともこれも小説に用いると、「現代語が歴史小説の中に出てくるなんて! 興覚めだ!」と勘違いされて怒られる可能性もあるので、なかなか取り扱いが難しい。いずれにしてもこの数年の間に生まれ、現代語・若者用語として用いられている言葉たちも、500年、千年後には「実はこんなに昔から用いられていたんですよ」と紹介される日がくるかもしれない。我々は日々、歴史の中に生きている。それとともに我々を取り巻く文物もまた、長い時間の中で変化しながら生き続けているのである。作家 澤田 瞳子, 【天理のサクラが“奇跡の絶景”に】写真家・藤浪秀明さん初の写真集出版写真家の藤浪秀明さん(46歳)が手がけた初の写真集『和想百景――知られざる奇跡の絶景』(株式会社KADOKAWA)が先ごろ出版された。“知られざる奇跡の絶景”をテーマとする本書には、別席場前のシダレザクラの写真2点が大きく見開きで紹介されている。掲載された写真は、日中および今年3月下旬から4月上旬にかけて行われた夜間ライトアップ時に、それぞれ雨上がり後の水たまりに反射させて撮ったもの。過去、藤浪さんが自身のSNSで「サクラボール」と名づけて発信したことから、国内外で話題となった経緯がある。「wasabitool」のハンドルネームで活動し、SNSの総フォロワー数が17万人を超える藤浪さん。今回の写真集出版には、撮影に協力してもらった地域の紹介のために、との思いを込めたという。とりわけ、毎年のように撮影に訪れる天理のシダレザクラは必ず掲載してもらいたいと版元へ要請したとして、「見本誌ができあがったときには、撮影当時、天理の皆さんに親切にしてもらった思い出が蘇って、うれしくなった」と振り返る。◇『和想百景――知られざる奇跡の絶景』はB5判112ページ。価格は2,200円(税込)。道友社おやさと書店でも取り扱っている。, 【子供たちの受け入れに真心込めて】少年会本部が提唱している「夏休みこどもひのきしん」の親里での受け入れが続き、週末を中心に多くの子供たちがおぢばで伏せ込みの汗を流している。こうしたなか、詰所によっては、帰参した子供たちを喜ばせようと、趣向を凝らしたイベントを催している。ここでは、3カ所の詰所が合同で実施したイベントと河原町詰所の取り組みを紹介する。スタンプラリーを合同実施 – 双名島・阪東・都賀の各詰所双名島、阪東、都賀の三つの詰所は8月6、7の両日、「TSUMESHOスタンプラリー」と銘打ったお楽しみイベントを合同で実施。二日間で計152人が参加した。これは、各詰所に設けられたゲームコーナーを回り、これらをクリアして得られるスタンプを集めるというもの。発案者の番正道人さん(35歳・宇多梅分教会長後継者)は「『夏休みこどもひのきしん』をきっかけに、久しぶりにおぢばに帰参する子供たちに、少しでも楽しい思い出をつくってもらいたいと思って」と語る。以前から、詰所の協力によって帰参者のためにできることはないかと模索していたという番正さん。合同実施に賛同した詰所の間で、どうすれば子供たちを楽しませられるかを話し合い、それぞれのノウハウを共有しながら準備を進めた。当日は、段ボールを崩れないように積み上げる「段ボールつみ」や、スマートボール、アーチェリーなど、さまざまなコーナーを設置。受付でスタンプカードを受け取った子供たちは、スタンプを獲得しようと各ゲームに夢中になっていた。屋外アトラクションを設置 – 河原町詰所河原町詰所では、詰所敷地内で「かわらまち横丁」を8月28日まで実施している。これは10年前の夏、「帰参した子供のためにできることを」との思いから企画したもの。以来、夏の恒例行事として定着し、多様な室内アトラクションで子供たちを楽しませてきた。今年は「コロナ下でも喜んでもらえるものを」と、新たに「巨大すべり台」「巨大めいろ」「巨大スケボーコース」の三つのアトラクションを屋外に設けた。制作に携わった鳴川宏さん(50歳・信友台分教会長・大阪府高槻市)は「親御さんに安心してもらえるよう、角度を調整したり、ミストシャワーを用意したりするなど、さまざまに工夫を凝らした」と話す。期間中は、少年会河原町団の委員がスタッフとして常駐し、安全面に配慮しながら運営に当たっている。