天理時報2022年8月31日号8面
【第23話「海はもう一つの地球」– ふたり】夏休みが近づくと、ビョーンさんの店を訪れる客の数が増えてくる。スクールのほうも忙しくなる。はじめてサーフィンを習うという人のなかには、若い女性や家族連れが多かった。ビョーンさんに頼まれて、カンもときどき子どもたちの相手をする。海は太陽の光にきらめいている。何もかもが笑っているように明るい。カンは子どもたちを連れてボードで少し沖に出る。波の上で質問をする。いちばん興味のあることは?ピアノ。部活。英語。ユーチューブ。美容師。相撲……。すもう?近くではビョーンさんが波をつかまえるタイミングを教えている。簡単な説明のあとで、実際にやって見せる。波をつかまえて素早くボードに立ち、そのまま十メートルほど滑る。さっそく一人が挑戦する。バランスをとりながら、こわごわと立ち上がった途端にひっくり返る。まわりの子どもたちが一斉に歓声を上げる。わたしはトトのボードに乗ってはじめて海に出た日のことを思い出す。水のなかを覗き込むと、浅い海底の砂にも波が揺らめいていた。それは水の動きによってできる波の分身たちだった。水面の波が降り注ぐ太陽の光を散らして、砂の上に波状のモザイク模様をつくり出している。その上を小さなすばしこい魚たちが泳いでいく。あの夏の日、何も失われず、すべては水のきらめきとともにあった。誰もがはつらつとして、元気で若かった。それから何年もの歳月が過ぎ、少年だったカンは大人になった。トトを失ったハハは、最愛の人のいない歳月を年老いた。波は静かに打ち寄せている。同じように見える波にも、二つとして同じものはない。ときに激する波も、いまはやさしく浜辺を洗っている。「不思議だね」。砂の上に腰を下ろしたビョーンさんが言った。「バルト海しか知らなかったわたしが、日本の海で泳いだりサーフィンをしたりしている。でも考えてみると、海って大きな水たまりなんだよな」カンは何も言わずに、遠い海の彼方を見ている。「海はもう一つの地球って感じがするね」いつかカンが話してくれたことがある。水のなかに入り、目を転じて海面を見上げてみると、思いがけない風景が広がっている。青空をバックに、砕けた波の泡が入道雲のように揺らめいている。そんな不思議な情景を、カンと一緒に見たような気がした。作/片山恭一 画/リン, 【東北、関東地方の豪雨被災地で実動 – 災救隊】東北地方は8月9日、停滞する前線の影響で、青森県、秋田県など広範囲で豪雨に見舞われた。一方、静岡県は13日、上陸した台風8号に伴う豪雨により各地で河川が氾濫し、浸水被害や土砂崩れが発生した。こうしたなか、天理教災害救援ひのきしん隊(=災救隊、橋本武長本部長)の青森教区隊と静岡教区隊は、それぞれの自治体や社会福祉協議会(=社協)の要請に応えて、被害甚大な地域へ出動した。ここでは、両教区隊の救援活動を紹介する。(8月23日記)冠水したりんご園や民家へ – 青森教区隊青森教区隊は、汚泥にまみれた家財道具を仮置き場まで運んだ(8月14日、弘前市小友地区で)青森県内では、弘前市でりんご園が冠水して農作物に甚大な被害が出たほか、五所川原市や鰺ケ沢町で民家などが浸水した。こうしたなか、青森教区隊(漆舘孝一隊長)は8月6日、社協の要請を受けて、弘前市大川地区のりんご園へ向かい、“災害ごみ”の撤去に尽力した。この後、14日に同市小友地区の民家へ出動。汚泥にまみれた家財道具を人力で搬出した。また、15日には五所川原市姥萢地区にも出向き、災害ごみを運搬。さらに、19日に同地区の家屋で災害ごみの撤去作業に当たった。漆舘隊長(67歳・倉石分教会長)は「コロナ禍の影響で活動が制限されることもあったが、可能な範囲でニーズに応えて活動することができた。月末には鶴田町で夏期訓練を予定している。引き続き、行政との連携を強めていきたい」と話した。なお、4日間で延べ39人の隊員が出動した。台風被害の地域で11日間 – 静岡教区隊静岡教区隊は、民家の床下の土砂を搬出(8月22日、松崎町雲見地区で)静岡県には8月13日、台風8号が上陸。松崎町雲見地区では、豪雨によって太田川が氾濫し、30棟以上の民家が浸水被害に見舞われたほか、土砂崩れも複数発生した。同日、伊豆支部の災救隊員が同町社協と折衝し、被害状況を把握。その後、15日にボランティアセンターが立ち上げられ、22日から31日まで10日間の出動が決まった。こうしたなか、22日の出動を前にした20日、社協から急遽、静岡教区隊(山口志朗隊長)に出動要請があり、同町の民家へ。家屋内の床下に流入した土砂の搬出に終日従事した。そして、22日からは3軒の民家へ。家屋内に堆積した土砂の搬出や家屋内の清掃などに汗を流した。山口隊長(57歳・駿東分教会長)は「被災者の方々の難渋を思うと、一日も早く復興できるようにとの思いが込み上げてくる。出動期間中、地域の方々に喜んでもらえるよう、精いっぱい活動していきたい」と語った。