天理時報2022年3月23日号8面
特別企画ウクライナに思い寄せる教友たち一れつきょうだいの教えを胸に日本時間2月24日、ロシアが隣国ウクライナへ軍事侵攻。ウクライナの首都キエフをはじめ、各地で激しい戦闘が続いている。事態が混迷を深めるなか、教会本部は9日、天理教ホームページに「天理教から皆さまへ」と題するメッセージを公開した。また、海外部や、同国のキエフ大学と学術交流協定を結ぶ天理大学は、現地と連絡を取りながら状況の把握に努めている。さらに、日本国内の教会や海外の布教拠点では、避難した人々の受け入れを申し出る動きも出てきている。ここでは、戦禍に見舞われたウクライナに思いを寄せる教友たちの姿を紹介する。(16日記)金沢市の曽山俊さん(7歳陸牧分教会前会長)は30年問、ソ連崩壊という歴史的出来事を「教えを広める機会」と捉え、天理大ロシア学科助教授(当時)でウクライナ出身のイワン・ボンダレンコさん(66歳・同ようぼく)の協力を得て、ロシア語を学んだ。その後、2001年から10年間、ロシア国内の刑務所で教諭師として活動。さらにウクライナへ移り、教誨活動を続けながら現地で教えを伝えてきた。曽山さんは「ウクライナの悲惨な光景を目にし、心を痛めている。現地のようぼくと連絡を取りながら、彼らの無事を祈っている」と語る。一方、曽山さんに導かれ、夫婦で別席を運んでようぼくの仲間入りを果たしたボンダレンコさんは現在、ウクライナのチェルニヒフ州の郊外で暮らしている。夫妻が生活する地域は比較的平穏な状況が続いているが、州の中心地では大きな被害が出ているという。不安な日々を過ごすなか、ボンダレンコさんは事態の沈静化を毎日、親神様に祈っている。「世界中の教友が、この戦争が一日も早く終結するよう祈ってくださることを願っている」と話す。関係者と連絡取り合い天理大では、かねて数多くのウクライナ人留学生を受け入れるとともに、天理大学生を同国へ派遣してきた。国際学部准教授の日野貴夫さん(60歳・旭日大教会信者)は、ロシア・ウクライナ文学を教えながら多くの留学生の世話取りをした。現在、ボンダレンコさんや現地の教え子らと連絡を取り合っている。「いま私たちにできるのは、ウクライナが平穏に戻るのを祈ること。もしたすけを求める声が届いたら、すぐに手を差し伸べたい」天理大ロシア学科(当時)出身で、「日本ウクライナ文化交流協会」を自ら立ち上げた小野元裕さん(53歳・敷土分教会ようぼく)も、緊迫した情勢を固唾をのんで見守っている。大学卒業後、ウクライナに興味を持った小野さんは2005年、単身同国へ渡り、同協会を設立。翌年帰国し、交流事業を続けてきた。現在、ウクライナの友人と連絡を取りながら、テレビやラジオの報道番組に出演して現地の情報を伝えている。小野さんは「教祖が『世界は、この葡萄のようになあ、皆、丸い心で、つながり合うて行くのやで」と仰ったように、今回の事情が平和的に治まることを願う」と語った。なお、現在までに8人のウクライナ出身のようぼくが誕生している(海外部把握分)。下記QRコードから、天理教HPのメッセージにアクセスできる。日野さんがウクライナを訪問した際、天理大で共に教壇に立ったボンダレンコさんと再会した(2019年、ウクライナ・キエフで)ウクライナで文化交流会を催した小野さん(後列右から二人目)文芸連載小説/片山恭一画/リンふたり【第2部】波のきらめきに前話のあらすじ高校生になったカンは、居場所を求めるように波乗りを始めた。大荒れの夜に海で溺れかけるが、不意に風が収まり、助かった。それは、まるでトトが救ってくれたかのようだった。第7話月の光に照らされてときどきカンは夜中に目を覚ます。手早く服を着替えて家を出る。車を走らせてトトが好きだったビーチへ向かう。二月は半ばを過ぎていた。菜の花が田んぼや川の土手を黄色く彩りはじめるころだった。春に向かいはじめたところで、季節が戻ってまた寒くなった。カンはセーターの上に厚手のダウンーケットを着込んでいる。風はほとんどなく波は静かだった。満月に近い月が海を照らしている。道路わきの草原に車を乗り入れた。エンジンを切ると、たちまち車のなかは寒くなった。運転席に坐ったまま、しばらく海を見ていた。月が光を投げると、海がそれに答える。そうやって月と海は言葉を交わしている。トトが呼んでいる気がする夜には、あの子の心もトトに会いたがっている。そんなときは、ここにやって来る。この海の見える場所で、二人は密やかな言葉を交わす。「やあ、元気にしているかね」「うん。そっちはどう?」わたしは二人のやりとりに耳を澄ます。もちろん言葉は当人たちにしか聞こえない。でも誰かが耳を澄ましていることが大切なのだ。すると天上の星々や、地上の草や木や動物たちが話しはじめる。言葉をもたないと思われているものたちが、自分たちの言葉を交わしはじめる。「年に一度か二度、不思議な小鳥に出会うことがある」。いつかハハは言った。「ムクドリとかジョウビタキとか・・・・・・普通に見かける鳥なんだけど、その鳥は、いつまでも立ち去ろうとせずに、ずっとそばに居つづけるの。そんなときは、トトが会いにきてくれたんだなと思う」カンはぼんやりした顔でハハの話を聞いている。大切な話を聞くときは、いつもこんなふうだ。相槌も打たずに、見た目はぼんやりしている。人によっては頼りないと思うかもしれない。でもハハには、ちゃんとわかっている。あの子の心は旅に出ているのだ。大切な話は、ここから遥か遠いところに、ひっそりと息づいている。それはハハが出会った小鳥が住まっているところかもしれない。雪が降りはじめていた。それこそ年に一度か二度の雪だ。暗い空から、月の光に照らされて白い花びらみたいな雪が落ちてくる。この雪は誰の化身だろう?誰が誰に会いに来ているのだろう?「さあ、そろそろ帰ったほうがいい」あの子は車のエンジンをかけようとしない。もうしばらく、ここにいたいのだ。花びらの数はどんどん増えて、やがて夜空を覆い尽くすだろう。文芸小説「ふたり」のバックナンバーはこちらから