天理時報2021年11月24日号4面
12月1日発売定価660円(本体600円】■『すきっと』のバックナンバーはQRコードから、ご購入いただけます。照ノ富士大相撲・横綱相撲のおかげで、いまの自分がある。それが自分のすべてです親方や女将さんに育てていただいて、みんなと稽古をしてきたおかげで、相撲は強くなったかもしれません。でも、偉くなったわけじゃない。そう思うんです。ただただ肉体と精神を鍛えて、相撲で活躍できる人間になりたいと思って、今日までやってきました。自分は、丁髷を落とせば普通の人です。社会のことは何も分かりません。相撲しかできない。そういうことは忘れてはいけないと思っています。相撲のおかげで、分にいまの自がある。それが自分のすべてなんだと思います。お相撲さんは、そうじゃなきゃいけないと思っています。子供たちや若い人たちには、もっと相撲を見てほしいです。それで相撲界が盛り上がって、相撲をやりたいという子が出てくればいいなと思います。一人でも二人でも、その子たちが目標とする力士のなかに、自分の名前が挙げられたら、ありがたいことです。ヤマザキマリ漫画家/文筆家いまは立ち止まって考えるときいま、緊張感をずっと保つことも苦手、考え続けているのも苦手というように、人々の心はなるべく楽をしたい、労力を使いたくないという方向に行きがちです。けれども、私は、むしろこういうときだからこそ、人は自分の頭で考え、自分で判断をするというスキルを高めるべきだと思っています。人々が自分の頭で考えなくなり、楽をしてなんとなく流されて生きていくようになった結果、社会がひどい方向に行ってしまったことも、過去には何度もあったわけです。たとえば、スペイン風邪の後にナチス・ドイツが横行したり、ファシズム政権が樹立されたり。これらはみな、第一次大戦とパンデミックで、人々が疲れ果てたときに発生したものだということを、思い出す必要はあると思います。耳の痛いことを避けず、面倒なことからも目を逸らさず、この時間をいかに過ごすかによって、未来が変わってくると考えています。時報歌壇植田珠實選巣ごもりによきかと受けし神様の御用の白衣十着を縫う名古屋市伊藤紘美寂しきは野菜作りを止めしあと荒れた畑の草を取ること日立市高岡とみえ挨拶され思わずあくびで返すなんてはしたなかったマスクでよかった伊勢原市宇佐美正治敷布団上げる足裏にやはらかしわれの体温ふふむ畳は東村山市加藤八重子あと五年生きられますか十冊目の五年日記買うか迷いて川崎市木村道治久々にジョッキ交える歓送会開放感と後ろめたさと天理市可児寛和デイサービスもアクリル板で仕切られるなじみの顔に会話も出来ず市川市小松富子「いらっしゃい」おみせごっこする幼らは「袋はもっていますか」と聞くふじみ野市酒井笑子麻痺の手を撫でつつ見あぐる病窓の夜空にうかぶ片割れの月宇部市天野敬子健やかな寝息の母がここにいて無事に一日終わるを感謝横浜市及川秀代妻の物届けて帰る吾の背を秋の入日が温めてくれる石川県岩城康徳クローゼットにワイシャツ、スーツ亡き夫の一揃ひの果てなく侘し生駒市栄嶋享永亡き夫のいつもはめてた腕時計を大学生の孫にゆずりぬ福山市藤井光子「ふるさと」を大正琴に弾合わせて歌う認知症の夫鳥取市西村節子老杉の根をのぼりゆく水の音耳つけて聞くいのちの響き呉市月原光政神苑に夏のにぎはひあらざりき松木はおのが影に静まり橿原市神谷和美選者詠手にのこる母の湿りを握りしめ斑な月のひかりを走る【評】伊藤さん一針一針心を込めて縫い上げられた十着が、白く輝く光を放っています。高岡さん長年の畑仕事を諦めた切なさが、丁寧に抜く草の仕草から滲み出ています。宇佐美さん―――独創的な、愉快なマスクの一首となりました。