天理時報2022年9月21日号8面
【第25話 自然のなかには生も死もない – ふたり】保苅青年の運転する小型トラックが農場に帰ってきた。荷台には鶏糞が積まれている。カンが卵を仕入れている養鶏場からもらってきたものだ。豆腐屋やスーパーマーケットからもらってきた豆腐のカスや米ぬかなどを加えて、スコップで丹念に混ぜ合わせる。さらにビニール袋に入れて何週間か寝かせておくと、発酵が進んで良質な肥料になる。農場で除草された草なども一カ所に積んでおく。するとミミズやゲジゲジなどが半年ほどかけて分解してくれる。これを畑に戻すと、やはり肥料になる。発酵させた鶏糞も畑に投じられる。草と鶏糞は力を合わせて畑の土を豊かにする。そうして育った野菜が人々の口に運ばれる。人間が「雑草」と呼んでいるものや鶏糞は、ブロッコリーやホウレン草やラディッシュなどにかたちを変えて、彼らの腹のなかに入る。犬のわたしとしては、ちょっといい気分だ。伝え聞くところによると、「夫婦喧嘩は犬も喰わない」というひどい言葉があるそうだ。わたしたちが鼻をクンクンさせて、なんにでも興味を示す動物と思っているのだろうか?「雑草や害虫っていう言い方はしたくないな」。いつかカンの店で食事をしているときに保苅青年は言った。「そんな言葉を新太には教えたくない。人も動物も自然も一つの世界で力を合わせて生きている。そう考えるほうが好きだな」「害虫は駆除するしかないものね」。ハハが同意するように言った。「雑草は抜いて焼却する」「ゴミも同じですよね」。のぶ代さんがつづけた。「袋に詰めて終わり。でも他の国へ持っていけば、まだ使えるものや有用なものになって、ゴミがゴミでなくなる。なんでもゴミにしてしまうのは、わたしたちの身勝手かもしれない」さすがに草と鶏糞で育てた野菜を好んで食べている人たちだけある。言うことが、いちいち理にかなっている。「循環しているものはつづいていく」。保苅青年が深遠な哲学でも語るように言った。「人や動物の命が、身体のなかを流れる血液によってつづいていくのと同じだよね。流れが滞ったり途絶えたりすると、命は失われてしまう」失われた命はどこに行くのだろう?どこにもいかない。はじまったものは終わらずにありつづける。生も死も所詮は人間の言葉である。「夫婦喧嘩は犬も喰わない」と同じだ。自然のなかには生も死もない。保苅青年が言うように、流れがあるだけだ。だからわたしは、いまもここにいて、カンや彼の家族や友だちのことを見守っている。作/片山恭一 画/リン, 【働く高校生アスリート「全国定通大会」で躍動 – 天理高第2部】働きながら学ぶ高校生のスポーツの祭典「全国高校定時制通信制体育大会」が先ごろ開催された。天理高校第2部の各クラブも出場し、好成績を収めた。ここでは、15連覇の大記録を打ち立てた軟式野球部をはじめ、全国で躍動したチームや選手を一挙紹介する。15連覇の偉業達成 – 軟式野球部軟式野球部は連覇記録を15に伸ばした。エースでキャプテンの有本義人投手(4年)を中心に、好投手がそろう同部。また、ランナーを確実に進めて得点につなげられるよう、状況に応じた打撃練習に力を入れてきた。今大会では決勝までの4試合を、すべてコールドで勝ち上がる。決勝の大智学園高校戦でも初回から得点を重ねていく。先発の有本投手は好投を続けたものの、六回にボークをきっかけにコントロールを乱し4失点。それでも、リードを守りきった天理高が15‐8で頂点に立った。有本キャプテンは「連覇への重圧もあったが、打線がつながり、しっかり得点を重ねることができた。大会中は感謝の心を忘れず、楽しんでプレーできたことが良かった」と話した。アベック優勝飾る – バレーボール部男女バレーボール部は男子が8年ぶり7回目、女子が3年ぶり14回目の栄冠を手にし、“アベック優勝”を果たした。高いジャンプ力が武器の内山辰朗選手(4年)とサーブが得意な市野友裕キャプテン(同)のダブルエースが中心の男子。予選グループ戦と決勝トーナメントを突破し、決勝では横浜修悠館高校と対戦。互いに1セットずつ取った後、第3セットを天理高が25‐21で制し、セットカウント2‐1で優勝した。一方、「全員バレー」を合言葉とする女子は、予選グループ戦を突破した後、決勝トーナメントの途中でけが人が出るアクシデントに見舞われた。それでも、科学技術学園TBC宇都宮高校との決勝では2セットを連取し、優勝した。原田小春キャプテン(4年)は「練習の前後などに個人個人が本部神殿で参拝し、無事に戦えるようお願いしてきた。優勝することができてうれしい」と喜ぶ。2年連続19回目V – バスケットボール部女子バスケットボール部女子は、2年連続19回目の優勝に輝いた。ポイントゲッターの山口さちキャプテン(4年)や、外角からのシュートを得意とする黒岩咲喜選手(同)ら個人技の高い選手がそろう。トーナメントを勝ち上がり、決勝で都立一橋高校と対戦。第2ピリオドでは相手にリードを許したが、第3ピリオドに逆転すると、69‐56で勝利した。山口キャプテンは「サポートしてくださったすべての人に、優勝という形で恩返しができたと思う」と笑顔を見せた。◇このほか、卓球部男子、バスケットボール部男子、バドミントン部男女が3位入賞。各個人戦の上位入賞者は以下の通り。男子〇陸上走幅跳2位=松永俊大選手(2年)〇同3位=森本一平選手(4年)女子〇ソフトテニス3位=大仁田実理選手(4年)・後藤愛選手(1年)ペア〇柔道63キロ級3位=塚晴奈選手(3年)