天理時報特別号2021年12月号2面
あなた架け橋安藤正二郎AndoShojiro1959年生まれ天理教本則武分教会長人生の下り坂で想うこと「台形」という詩話し相手の言葉が聞き取りにくい、血圧が高め、正座から立ち上がるのに時間がかかる。数年前からこんな身体の異変が気になり始め、「そろそろ人生も下り坂か」などと思うようになりました。今日までの道を思えば感謝することばかりなのに、どうも態度や言葉に現れてこない自分に少し苛立ちも感じていました。そんなときに出会ったのが『中島みゆき第二詩集四十行のひとりごと』です。中島みゆきさんといえば日本を代表するシンガーソング名曲『時代』をはじめ、『わかれうた』『悪女』など、私も数多くの初期の作品に魅了されました。詩集のなかに『台形』という詩があります。〈赤ん坊は日に日に育ってゆく急な坂+ん登るように日に日に育ってゆ人生の道のりを台形に見立てたこの詩を読み進めていくと、どこからかやさしいメロディーが聞こえてくるようで、たちまち「みゆきワールド」に引き込まれてゆきます。〈年寄れば日に日に弱ってゆく急な坂をころがり降りるようにみるみる弱ってゆあちらもこちらもいっせいにガタが来て/昨日出来たことが今日出来ないようになる〉ここまで読んで、「そうか、みゆきさんも同じなんだ」と一瞬思いました。しかし一流のアーティストは、ここからが違います。〈ここにはきっと何かあるこの急な下り坂には何か仕掛けがある〉そう、前を向く気持ちを失っていないのです。詩は続きます。〈泣いて降りても下り坂笑って降りても下り坂〉この一節は、うつむいて何事も諦めかけていた私に、切なことを思い起こさせてくれました。人生を振り返れば、たしかに登り坂がありました。音楽や勉強に夢中になった学生時代。仲間と共に教会を盛り上げようと頑張った青年時代。登り坂を引っ張ってくれていた父が急にいなくなるつらい時期もありましたが、教会の皆さんに支えられて、ようやく辿り着いた平坦な道。それが結婚だったように思います。今まで一人だったのが、これからは二人で歩めるようになる。