天理時報2022年12月7日号6面
【共に見上げる月 – 成人へのビジョン9】おつとめ衣の裾を破ってしまいました。翌日は自教会の祭典日です。「ごめん、裾破っちゃった! 直せる?」「また? この忙しいときに!」。妻の言う通りです。そこで、次のように言ってみました。「ねえ、仮に“最高の奥さん”だったら、こんなとき、なんて言うのかな? ちょっと演技してみてよ」「……大丈夫ですよ、後で縫っておきますね」。グッときます。「最高だね。……俺の勝手な妄想だけど、究極の奥さんバージョン言っていい?」「何?」「あなたって、人がいいから、廊下で人に道をお譲りになって、きっとそのときに引っ掛けたんでしょう。大丈夫ですよ」そして、こう続けます。「この最高の奥さんを1カ月続けてくれる?」。即座に「パンクするわ!」と妻。迷いのない清々しい返答でした。さて、妻にこう言ったものの、「理想の主人」なら、どうしただろう? そう自問すると、はて、自分でも驚くほど思いつきません。最高の奥さんはパッと具体的なイメージが湧くのに、理想の主人は、てんで曖昧です。要するに、妻に求めるイメージばかりが強くて、夫としての目指すべきありようが空っぽなのです。これは恐ろしいことだと思いました。イラスト・かにたづこ翌朝、妻にそのことを打ち明け、話し合いました。「理想の主人のあり方は分からないけれど、お道をしっかり通ることで、自然と仲のいい夫婦になれるんじゃないかな」。それは相手の理想に合わすでもなく、自分の理想を追求するでもなく、道の理に自らを合わせていくこと。話していて、お互いストンと心に治まるものを感じました。『天理教教典』には「一つに心合せるのは、一つの道の理に心を合せること」とあります。表面的にでも人に合わせれば、争いは避けられます。しかし、互いに心の底から幸せを感じられるかといえば、そうではありません。相手でも自分でもなく、神様をみる。月日は遙か遠くに見えますが、共に見上げると、何か通い合うものが生まれるはずです。道を歩む中に、いつしか二人の心も治まっていく。そんな実感があります。祭典の日、妻が縫ってくれたおつとめ衣に、私は清新な気持ちで袖を通すのでした。可児義孝, 【天理の“文化財”高評価 – 天理図書館】文化庁の登録・指定へ先ごろ文化庁の文化審議会で、天理図書館(安藤正治館長)所蔵の『源氏物語国冬本』(鎌倉後期・室町後期写)を重要文化財に指定することが答申された。同館所蔵の資料が重文に指定されるのは、平成30年の『源氏物語』池田本(鎌倉末期写)に続いて87点目。また同日には、同館の建物を登録有形文化財として登録することが答申された。これを記念し、同館は11月21日から26日にかけて、建造物の見学・解説を行う「天理図書館見学会」を実施した。図書館の建物 登録有形文化財に新たに国の登録有形文化財として登録される同館。現在、約150万冊の蔵書数を誇り、国宝6点、重文86点などの貴重書も多数有している。大正7(1918)年に創立した天理教青年会の事業の一環として設立が打ち出され、昭和5(1930)年10月18日に現在の本館が完成。「おふでさき」の研究のうえから、創設者の中山正善・二代真柱様が収集された連歌・俳諧書コレクションの「綿屋文庫」をはじめ、国内外の貴重な資料が同館へ収蔵された。設計は、東京大学安田講堂の設計にも関わった坂静雄氏と、学校建築を手掛けた島田良馨氏によるもの。西館の外観は、ロマネスク風になっている。一方、昭和38年に増築された東館も、西館と一体感をもって建てられている。92年前の建造物および調度品が、現役の図書館として使用されている事例は珍しく、歴史的・文化的にも価値が高いという。◇なお、登録有形文化財への登録が答申されたことを記念し、同館では11月21日から26日にかけて「天理図書館見学会」を実施。建造物としても高く評価された天理図書館に関心を寄せる、多くの一般来場者が訪れた。『源氏物語国冬本』重要文化財に今回、重文指定されるのは『源氏物語国冬本』(鎌倉後期・室町後期写、縦16.5センチ、横16.5センチ)。平安中期に成立した『源氏物語』は、日本の古典文学の中で、『古今和歌集』と並んで最も多くの写本が伝えられている。ところが、成立当時の伝本は、これまで確認されていない。そのため鎌倉期のものが、現存する最古の写しとされる。同写本は、鎌倉後期に書写された12冊と、室町後期に書写された42冊からなる『源氏物語』53巻54冊。このうち、鎌倉後期の12冊が、住吉神社の神官の津守国冬(1270〜1320)が記したものと伝承されていることから、当写本は「国冬本」と通称されている。鎌倉後期の写本が、一人の人間の手によって12冊(このうち別本が11冊)もまとまって残された事例が貴重であるため、国冬本は『源氏物語』の研究において極めて価値が高い資料となっている。