第6話 たった一個のパンが – ふたり
前話のあらすじカンは、動植物などの写真を撮影し、自然への思いや過去の出来事を交えた文章とともにブログに投稿している。カンのレストランには、話を聞きにやって来る客もいた。 第5話 自分はひとりではない ・・・
前話のあらすじカンは、動植物などの写真を撮影し、自然への思いや過去の出来事を交えた文章とともにブログに投稿している。カンのレストランには、話を聞きにやって来る客もいた。 第5話 自分はひとりではない ・・・
カンが写真を撮るのは、主に海に出かける早朝か、食材を仕入れるために省吾さんの農場へ向かう午前中だ。海や波や空の写真のほかに、植物や虫や小さな生き物たちの写真もたくさん撮っている。 〈小学生のころ、ひと・・・
外国から帰ってきて、カンが少しずつ言葉を喋りはじめたころから、あの子は普通の青年に戻っていった気がする。もちろん喜ばしいことである。同時に、ちょっと寂しくもあった。わたしたちの関係は変わらなかったが、・・・
前話のあらすじ省吾のもとで立派な大人に成長した保刈青年は、のぶ代という女性と結婚した。二人の間に生まれた新太は、カンに懐くようになっていた。 最初はハハのパン屋を手伝いながら、客に簡単なサンドイッチや・・・
男は名前を保苅という。海に落ちたカンを連れて、ずぶ濡れの姿でトトとハハの前に現れた青年である。あれから十年が経ち、彼もまた立派な大人になった。保苅青年を省吾さんのところに連れていったのはトトだった。青・・・
冬でも波のある日は海に出る。風が冷たく、海に入る時間は限られるけれど、この季節ならではの良さもある。まず水がきれいなこと。海の青さが際立つのも、冷たい北風が吹くころだ。遠くから静かなうねりを運んでくる・・・
作者 片山恭一 第2部では、青年になったカンの話を書こうと思っています。高校を卒業したカンは、就職をせずにバックパックを背負って世界を放浪します。そのなかで少しずつ言葉を取り戻していく。そういうことっ・・・
人間の生の原型は「ふたり」ではないか。「ふたり」という原型を、一人ひとりの「自分」という仕様で生きている。そんな気がします。もとのかたちが「ふたり」だから、ぼくたちは動物たちとは違った意味で苦しんだり・・・
11月17日号をもって、全40回の連載を終えた『ふたり――星の降る夜は』(第1部)。読者から好評の声を頂き、続編となる第2部の連載を来年1月にスタートする。ここでは第2部開始を前に、著者・片山恭一氏に・・・
その日、わたしたちはハハの運転する車で海にでかけた。いつも散歩する砂浜ではなく、波乗りをする連中が好む海岸、トトがいうところの「ビーチ」だ。 「海の季節は地上よりも三カ月くらい遅れているんだよ」。海辺・・・
作/片山恭一 画/リン 前話のあらすじトトの死から立ち直れずにいるカン。落ち込んでいる姿を見たツツは、ツツなりのやり方でカンを励ましていた。 第38話 Tシャツ、交換しようか 棚田の稲が黄金色に実った・・・
空はすっかり秋の装いだった。波に反射する光や、海を渡って吹いてくる風の匂いから、季節が少しずつ進んでいることがわかった。 「おとうさんが言うには、亡くなった人は隠れることはできるけど、離れることはでき・・・
その夜、カンはベッドのなかで泣いていた。トトが亡くなってからはじめてのことだった。嗚咽を押し殺して、あの子は長いあいだ泣きつづけた。 彼はトトのために泣いていた。ハハのために泣いていた。そして自分のた・・・
トトの死とともに、夏休みはあっけなく終わってしまった。町を歩きまわったり、パンを焼いたりしているうちに新学期になった。 九月の終わりには、ホテルでの仕事を終えてツツたちは町を離れることになっている。そ・・・
夜更けにハハは電話で誰かと長く話し込んでいることがあった。会話の一部は、床に寝そべっているわたしの耳にも入ってくる。 「なくしたものにしがみついてばかりいる」と彼女は言った。「あの人のことを考えずに済・・・
作/片山恭一 画/リン 前話のあらすじトトの葬式後、カンは夜中に目を覚ますことが増えた。その姿を見たピノは、カンが自分の選択を後悔しているのではないかと心配していた。 第33話 どっちを選んだ? ハハ・・・
作/片山恭一 画/リン 前話のあらすじトトのお葬式から数日後、ツツ、サユリさんがやって来た。ツツはカン、サユリさんはハハに寄り添ったが、ふたりの心の傷は深かった。 第32話 一週間後の結婚記念日 坊さ・・・
作/片山恭一 画/リン 前話のあらすじ夏休みのある日、カンの父トトが亡くなった。カンは、失意のあまり、以前のような“道迷い”が再発する。カンと同様に、ハハも大きなショックを受けていた。 第31話 トト・・・
作/片山恭一 画/リン それは海だった。トトが何よりも愛した海が、あの子と、あの子の幸せのあいだに割り込んだ。二つのものは、世界中の海を集めたよりも広く、遠く隔てられてしまった。 トトの家は代々が医者・・・
作/片山恭一 画/リン 前話のあらすじ一言主に願を掛け、ツツ一家に降りかかろうとしていた災いを取り除いたカン。肩の荷を下ろしたカンは、海でツツ、ピノと水遊びを楽しんだ。 第29話 夏休みの明るい午後 ・・・