ある夜の山の辺の道 – 山の辺の道 心の景
日の暮れた山の辺の道は、昼間とはまるで別の顔を見せる。写真は環濠集落として知られる天理市萱生町。特にこの日は、夜の帳が下りると家々の白壁がぼうっと浮かび上がり、周囲にある古墳群は黒々として人を寄せつけない雰囲気が漂っていた。
大和平野には環濠集落が多い。外敵の侵入を防ぐために周囲に濠を巡らせた、こうした集落の多くは、応仁の乱のころに造られたという。京都で始まったこの乱は全国へ飛び火し、大和でも戦があった。当然、そこには人の生き死にがあっただろう。しかし、その事実と人々の悲しみは時の経過とともに風化し、やがて何ごともなかったかのように日常の営みは繰り返されていく。
こんな夜は、そうした人々にも思いを馳せてみたい。「あなた方のおかげで、私たちの今があります。ありがとう――」
風のそよぎに木々が揺れ、月がひときわ明るく輝いたように見えた。
(J)
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