「思秋期」を知る – 人と関わる知恵
金山元春
天理大学教授・本部直属淀分教会淀高知布教所長
小学校高学年から中学生くらいまでの時期は「思春期」と呼ばれます。この時期には身体が急速に大人らしく変化していきます。一方、心の変化は曖昧で、大人扱いしてほしいときもあれば、幼い子供のように甘えたいときもあり、本人も周囲も、そのギャップに揺れる時期です。しかし、それも一人の人間として心理的に自立していくために欠か
せない心の作業なのです。こうした思春期の葛藤を経て、大人への階段を上り始めた青年は、いよいよ社会へ巣立ち、人生の盛りである“夏”へと向かいます。20代、30代は、仕事に家庭にと忙しくしながらも、心身ともに充実した日々を送ります。この年代は、新しい人間関係を築くことや仕事を覚えることなど、自分の外側へ心のエネルギーを向けるのが特徴です。
これが40代、50代になると、若いころに比べて生活は安定し、落ち着いた毎日が続きます。それは幸せなことですが、ふとしたときに「自分の人生は、これで良かったのか……。いまとは違う生き方もあったのでは……」と虚しさを感じるようにもなります。心のエネルギーが自分の内側へ向かうことが増え、自らの人生を顧みざるを得なくなるのです。
このような時期は「思秋期」と呼ばれます。思春期と比べると聞き慣れないかもしれませんが、子供が揺れていたり、反抗的であったりしても、思春期という言葉を知っていることで慌てずに構えていられるのと同じように、思秋期という言葉を知れば、この時期に生じる自分や他者の変化を「ああ、これが思秋期というものだな」と受けとめることができます。
思秋期とは、心の揺れに戸惑いながらも、「残りの人生をどのように生きていくのか」と、自分自身を見つめ直す時期と位置づけることができます。こうした心の課題に取り組むことで人は成熟し、人生の深みを増していくのです。また、これは自らの老いと向き合う“人生の冬”に備えるための作業ともいえます。
私も思秋期の年代です。心が揺れるときもありますが、親神様・教祖のお導きを信じて、大切な人生をゆったりと歩んでいきたいと思います。