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目に見えない本質を全身で感じてみては


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秋来ぬと目にはさやかに見えねども
風の音にぞおどろかれぬる

藤原敏行

『古今和歌集』に収録されている歌です。「秋が来たと、はっきりと目には見えないが、風の音ではっと気がついたことよ」という意味で、古人の豊かな感性をうかがい知ることができます。

立秋の歌として詠まれているので季節は8月ごろですが、温暖化が取り沙汰される現代にあっては、残暑が続く9月でも違和感なく味わえますね。

歌中で作者は、秋の訪れを「目に見える風景」ではなく、「風の音」で気づいたというのです。風がもたらすのは音だけではありません。少し乾き始めた空気。冷気に混じる匂い。耳、鼻、肌などを、自然に向けて解放しながら感じる“秋の気配”です。

とかく目に見えるものしか信じようとしない現代人に、「時には目をつぶって、全身で物事の本質を感じるのはいかが?」という、古人からの問いかけが聞こえてくるようです。

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