すきっとVol.38
特集 ターニングポイント
各界著名人が語る”人生の分岐点”とは
「すきっとした気分で暮らすために」をコンセプトに、著名人へのインタビューや対談などを掲載しているインタビュームック『すきっと』の最新第38号が、6月1日に発売される。テーマは「ターニングポイント」。特集では、劇作家の野田秀樹さん、女優の檀れいさん、初代スポーツ庁長官を務めた鈴木大地さんらが、自らの歩みが変わった”人生の分岐点”について語っている。さらに、人気コーナー「ヒューマン」では、数多くの題字やロゴを手掛ける人気書道家の武田双雲さんに、書を通じて伝えたいメッセージについて語ってもらった。ここでは、特集とヒューマンの中から”光ることば”をピックアップする。
変わるべくして変わる、その点がターニングポイント
野田秀樹 劇作家/演出家/役者
いまは亡き京都大学名誉教授の今西錦司さんは、ダーウィンの進化論に対して、「今西進化論」というアジア的な哲学も入った進化論を唱えた素晴らしい学者さんですが、その今西教授は「変わるべくして変わる」ということを唱えました。ダーウィンの進化論は、より優れたものが次の時代に出てくるという淘汰的な発想です。でも、今西さんは「ではなぜ進化的に遅れている動物がいまも生きているのか」との疑問を持った。それで導き出したのが「淘汰ではなく棲み分けをしただけなんだ」ということでした。「変わるべくして変わる」という東洋的な考え方です。
私は、まさに変わるべくして変わる、その点がターニングポイントだと思うんです。われわれ人間ごときに「ここだ」というのは見えないのではないかなと思います。自分がやるべきことをやり、道をしっかり歩んでいれば、いつの間にか「ここだ」というポイントに来ていたりするんじゃないかという気がします。
劣等生から一躍トップ娘役へ 昨日より一ミリでも 成長した自分に
檀れい 女優
今回のコロナ禍は、エンターテインメントとは何か、自分にとって演じるとはどういうことなのかを、あらためて考えるきっかけになりました。人間は、娯楽や音楽、芸術がなくても死ぬことはないでしょう。でも、苦しくてどうしようもないときに、たまたま聴いた音楽に心を揺さぶられたり、あるいは、お気に入りの映画を観たら勇気が湧いてきた、というようなことがあると思うんです。それがエンターテインメントの力なんだと思います。
これからは、一人の役者ではなく“表現者”として、いろんなジャンルで自分を表現できる、振れ幅の広い人間を目指したいと思います。私一人では何もできませんが、多くの人たちがそれぞれの技術やアイデアを結集して、同じ方向を向いて進むことで、素晴らしいエンターテインメントができていくはず。先行き不透明な状況でも、「明日から頑張ってみよう」と、上を向いてもらえるような作品を、これからもお届けしたいと思います。
人と違っていいじゃない! 自分を信じて前へ進もう
鈴木大地 初代スポーツ庁長官
私が現役のときは、日本人がオリンピックで16年もメダルを取っていない時代でしたから、何が正解か、どうやったらメダルが取れるのか、周りの人を含めて誰も分からないんです。だからチャレンジしていくしかない。それが原点ですね。
とにかくチャレンジしてみる。ダメだったらしょうがない。どんな方向に進むか分からないけれども、自分で決めたことなので納得感があるじゃないですか。逆に、人に決められて、やらされるのが苦手なんです。道なき道を行くっていうのが好きでしたね。
周囲からは「日本選手は10年以上、メダルが取れてないのに、そんなの無理だ」という声もありました。でも、そこに合わせちゃダメですよね。自分は自分だし、自分の見てきたこと、考えてきたこと、感じてきたことを信じて判断し、目標に向かっていくべきです。自分の気持ちを、世の中の声に合わせなかったのが良かったのだと思います。
ヒューマン
「楽」が生み出す無限のエネルギー――筆に託して世界へ届け
武田双雲 書道家/現代アーティスト
僕の人生のモットーは「楽」。つまり、自分が楽しむ、相手を楽しませる、自分が楽になる、相手を楽にさせる、この四つを極めることを人生のテーマにしています。
「楽」をテーマにして、常に自分の行動をチェックするようになりました。そして、一つひとつの動作を丁寧に楽しむように心掛けたんです。すると少しずつですが、何をしていても、何が起こっても楽しめるようになっていきました。人間はネガティブになりやすい生き物ですが、心がけ次第で誰でも環境に左右されずにポジティブでいられます。
世の中の人たちは「いまは苦しくても、未来のために頑張りなさい」ということをよく言いますよね。未来のために努力するのは素晴らしいことだと思います。ですが、僕はそれ以上に「いまを楽しむ」ことを大切にしたい。将来、何が起こるかなんて誰にも分かりません。将来を心配するよりも、いま目の前で起こる”一期一会”を楽しみたいんです。
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